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2025年04月27日23:27

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「サイレントナイト」を見て。〜復讐するは「我だけ」にあり。そして他の皆はとり残された。〜

首元に掛けた紐に通した鈴が小刻みに上下に揺れる下には、胸から腹にかけてトナカイの顔が大きくあしらわれた柄のセーターが画面に切り取られている。カメラが引いて行くと、その袖や裾は、血が染まって汚れていて。そして、それを着用して必死の形相で息を切らせながらも「何か」の足取りを追い求め走る男の全身が映し出されて。カメラは、上空へと上がると、住宅や2〜3階程度の建物が立ち並ぶ街中で、彼独りだけが駆り立てられて駆け回っている。どうして服に血をつけたままなのか、何を追いかけているのか。見ている側も、つい身を乗り出さずにはいられない。

と、良かったのは、この冒頭部分だけでした。
冒頭のツカミの出発点は、クリスマスイブの日中に男が出くわした不慮の出来事にあった。張り合うギャングが互いに車に乗っての撃ち合うも、並走しながら我が家の庭先に差し掛かったが為に、流れ弾が遊具で遊ぶ幼い息子を通貫して。出血した我が子を介抱するも息絶えており、憤怒にかられ車の後を追って駆けだしていたのである。

必死のランニングの末、輩たちの車に追い付くも徒手空拳のマイホームパパの悲しさ。ギャングボスの銃弾が喉を貫通して一命は取り止めたものの声帯損壊で「声」を失う。「復讐するは我にあり」と男は独り恨みの炎に身を焦がし、銃の扱いにナイフを使った接近戦とか戦闘能力を鍛え、奮発して馬力ある高出力のスポーツカーにフロントグリルも強化改造のうえ、近くの工業施設の広い駐車場でドリフトとか運転テクニックの向上に務めて、自らを戦闘マシンへと仕立てる傍ら、ギャング達を地道にリサーチして。それもこれも、息子の命日12月24日を、リベンジ決行のXデーと決めた男の思い込み、いや一応、執念に突き動かされての行動なのだけれど。

タイトルは、復讐実行に決めた日と主人公の男の怪我で、「無声」となるのを引っ掛けているのだけれど。九死に一生を得てから、約10カ月の間、何も語らず、お陰で他者とのコミュニケーションも無く愛息の復讐に時間もお金も費やして。なので、男がワンマンアーミーとして、多数のならず者をなぎ倒す見せ場は成立するし。数年前ウー監督が、福山様を起用して獲った「マンハント」なんかに比べれば、安定の米国製だから、「М:i-�供廚把教薀─璽献Д鵐箸離ぁ璽汽鵑�追撃のスタントで馴染みとなったバイクもチェイスに参入してこのジャンルの肝となる見せ場には綻びも無く、見せ場の説得力を持たす事は出来たとは思うけれど。

見る前の短評では、動きと劇伴、効果音だけで見せるために言葉を排除したのは功を奏しているとあったが。私には、その為に男の「復讐心」が、単なる独りよがりで、説得力を持たせたはずの活劇場面も、焚きつけられて感情を高ぶらせるエネルギー源ともならなかった。こっちが、年輪重ねたせいもあるのだろうけれど。子供一人の父子家庭ならまだしも、「喪失感」は、妻も抱えた筈で。退院後、復讐の支度に一方的に傾いて、妻とはスマホを介してやり取りするだけで。気が付けば、彼女が、夫から離れてゆく事に。

準備段階で敵にバレたり、若しくは復讐実行で失敗すれば、妻の身はアブナイことになるだろうに。そして、男が入院した際に、ギャングの抗争を追っている黒人の警部が訪れるも。Xデーの現場に警部が現れるまで、殆ど接触無しで。男が、戦闘能力向上に充てる間に、先の二人との「関り」を作ってから、クライマックスの見せ場で、それを機能させる工夫があれば見ているこちらもエモーショナルに高まっただろうに。「無声」の設定が、結局見せ場を失わせる事になったとしか思えない。

ツカミは「良し」としても、その後はそんなスキマ風が吹きすさぶので、こちらも余計な事に考えが散ってしまって。男は、電気工の個人事業をしていて妻とダブルインカムっぽいのだけれど。自身の入院費だって、米国は医療費保険も全額個人負担だっていうし、射撃場に通ったり銃を揃え、なかなかの車を購入したり。その間、食べなきゃタフな身体は作れないだろうし。一軒家持っていたから、資産持ちではあっただろうけれど。一体、いかほどの貯金があったのだろうって、気持ちが入らない状態で決戦のクリスマスイブに突入。

ただただ、見せ場が終わるのを眺めていた感じで、感情移入度が上がらない。去年、待望の初スクリーン鑑賞が叶った名作「男たちの挽歌」も、80年代製作だからコンプラ抵触もあれば、レスリー・チャンのきかん坊の弟にも、ヤキモキさせられたりするけどさ。辛抱を重ねたティ・ロン兄いと荒ぶる武神のチョウ様の怒りの発火点とクライマックスの開始点のタイミング調和が絶妙なタイミングのうえに、観客の為に安全基準度外視の献身的スタントは、銀幕で更に熱く映えた。なので、少しでも、ウーさんらしさを見たいと虚しく過ぎ去る銃撃戦を祈りつつも終幕を待っていたところ。登場人物の一人が、二丁拳銃の構えを見せた瞬間、すこしウーさんメーターが上振れ仕掛かるも、直ぐに目盛を刺す針は下降して。

やっばりベタでも、登場人物にエピソードが紐付かないと。敵となるヒスパニック系のギャングのボスも、クスリでハイにさせた自分の女に、軽機関銃を乱射させて「盾」にするようなチッサイ奴でラスボスとして格不足は否めないうえに、後ろに流れるヒップホップも、耳障りなだけで、「挽歌テーマ」の様に奮い立たせる劇伴に程遠く。

ウー監督は、「箸にも棒にもならないキャストと脚本を掴まされたんだ」って思い込もうにも、製作者としてご自身の名前も入っているから送り出した責任は免れないか。クレジットを眺めているとコロナ対策担当者の記載があって、2023年の製作になるようだけれど。今年までの間に、公開が見送られていたのも、察せられるというものだ。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 シネマ��BESTIAにて

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