mixiユーザー(id:20808806)

2024年11月24日22:59

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「アイミタガイ」を見て。〜間の悪い彼氏さんにも、触れ合いからの思いやりが巡って報われて。そんな循環で繋がる世の中なら、良いのにさ。〜

ある程度の尺の視聴に抵抗が無ければ、無条件に勧められる一篇。

何より、性根が悪かったり、粗暴だったりといった悪い人間が一切出て来ないし。現実と地続きの憂いごとを、見せつける事も無く。「八犬伝」に出ていた鶴屋南北が避けて通りそうな、理想とされる人間の性根の美しさに触れられて、ありきたりに見える日常に潜む真理に気付きをもたらし、前向きな気持ちでエンドロールを見届けられるでしょう。

黒木華さん扮する結婚式場の披露宴企画立案係の梓が、事故で亡くなった友達叶海(かなみ)への癒える事のない「喪失感」から、叶海のスマホへメッセージを送り続けていて。叶海の両親の西田尚美さんと田口トモロヲさんは、手元に残された遺品のスマホに度々表示されるメッセージのウインドウを眺めては娘に近かった送り手の事を思って更に胸を痛めるのだが。そんな両親に、二人の知らない児童養護施設からの叶海宛のメッセージカードが転送されて来て。写真家として世に出ていた娘の「一面」を知る事となる。

突然の親しい人の不幸な出来事に纏わる先の三人を起点にして、彼女らを取り囲む周囲の人達の過去の体験や日頃生活を送るうえでの些細な気付きから沸き起こる想いや優しさが連環をなして思いやりの輪をなす。そして、知る事の無かった他者を動かし、思いもかけず施した本人にも巡って来る。「情けは人の為ならず」のことわざもあるけれど、「相身互い」は、それより何かを施そうとか強い意識ではなく、交流の輪の中でいつしか好循環が出来上がっていたみたいな感じで。

劇中、梓と叶海が知り合った学生時代の回想のなかで、相手が支えてくれる前提で叶海(またも、「からかい上手の高木さん」に続いてセーラ服姿の白鳥玉季さん)が、背中から倒れかけるところを、後ろに居た梓が彼女を支える様子が出て来て。その様子は、今の梓の場面でも引用されています。適材適所の配役人全員が、その動作を見せやしないけど。気が付けば、「人」という字の成り立ちの如く、支え、支えられている様子が、出て来るエピソードを余すことなく活かして、キッチリ、無駄なく仕立てられております。

そんな中で、生前の叶海と最後の言葉を思わぬ場所で交わす事が出来た父の田口トモロヲさんが、「相身互い」のサークルが成す恩恵を実感出来て。そうして亡き娘の存在を心の奥に確かに刻むや、黒木華さんと悼み合いつつ前を向く姿が深く焼き付けられます。

思いもよらぬ偶然の重なりが見守る客席に感涙を誘うところ、間の悪い梓の婚約者である中村蒼さん扮する澄人が、相変わらずの天性発揮かと思いきや。無意識に他所の人には、優しさを発揮していた彼にも、良い「報い」が訪れて。中村蒼さんは、TVドラマの脇役で、どっちかというと漢気を前面に出した、言っては何ですがカタ通りの盛り立て役を見て来たのもあるので、間の悪さ続きでクスぶる優男感が新鮮に写りました。まあ、役者ですから、見せる表情を変えられるのは当然ですけど。ともかく、ここでも亡くなられた佐々部清監督の遺志を継いだ作り手の、登場人物に向けた細やかな心遣いが感じられました。

私の鑑賞歴では、和装姿が続いていた黒木華さんの今風の女性像が見られて、何より。そして、エンディングで流れる「夜明けのマイウエイ」での歌声まで聴けて、更に満足。世代なので原曲は知っておりますけど。歌のタイトルと違いこれから夜が深まるタイミングで流れるのに合わせてか、間奏のピアノの音色とか繊細なアレンジになっていて、黒木さんの優しく穏やかな歌声と巧く調和して心地よい。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン シアター��にて

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