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2024年10月27日22:54

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「若き見知らぬ者たち」を見て。〜抱え込みすぎでも、降ろす事は許されず。いっそ、壊してくれたなら〜

若手監督の才能に触れるべく、米国のヒット作や強力な話題作にも目もくれず。売出し中の俳優さんを起用して、諸外国の製作者も後ろ盾についた意欲作ではありますが。長年の鑑賞による錆びついた感性に活をいれて貰おうと臨んだのですが、残念ながらそれには及ばず、次への奮起を期待となりました。

高校時代は、サッカー部のキャプテンを務めるほど明朗快活だった青年彩人は、亡くなった父親の借金と父の奔放勝手な暮らし方に振り回されて、自我を喪失し子供への退行現象とも受け取れる精神を病んだ母親の面倒をみて。父に夢を託された弟の荘平は、格闘技に打ち込んでいてアテに出来ず。彩人は、昼は工事現場で働き、夜は両親が立ち上げたカラオケスナックを開いて、昼夜働きづめ。恋人の日向が、時折自宅に来て家事も含めて面倒を見に来てくれるものの、彼女は看護師なので、夜勤のシフトになってしまうと他には頼れる人が居ない。

なので、行動に自制の利かない母親が、近隣を俳諧してスーパーや他人の居宅で迷惑を及ぼす事が多い。生活の為に働くことに追われたヤングケアラーの彩人は、自身に降りかかる厄介事を払おうと、「謝る姿勢」が常態化して来て。どうにか、沸き上がる苛立ち、怒りをどうにか抑え込んではいるが、暴発寸前。サッカー部からの友人である大和の結婚パーティーが開かれるその夜。用事でスナックに寄ったところ、店を開けろと詰め寄る酔客達と小競り合いが、思いもよらぬ悲劇を呼ぶ。よりによっての親友の祝いの夜に。

彩人に磯村勇人君、日向に岸井ゆきのさん。そして、大和には、9月から年末にかけて出演作が切れない忙しさの染谷将太さん。それと、悲劇に係る警察官に滝藤賢一さんで、朝ドラ「虎に翼」での可笑しくもヒロインを導く善人役を、黒く塗り替えられていた。

気鋭の若手演者を揃えて、滝藤さんの他ベテラン演者も、奔放な迷惑父はイメージ通りの豊原功補さんだし。母親役の桐島れいかさんなんか、D.ホフマンやR.デニーロにも引け劣らない疾患者演技で。彼女のネジが外れた行動で、台所で卵焼きをひたすら作り散らかした後の「惨状」とか、美術や大道具の裏方の汚し仕事も徹底していて。彩人の抱えるストレスも、同情しかないし、磯村君もスタッフの苦労を受け止めて役に打ち込んでおられました。

弟のロードワークや彩人の通勤時に曲がりくねった高低差の大きな坂が、幾度か現れて。彩人は、そこを自転車で下って加速度を付ける。下り切ってスピードが上がっていて、待ち構えるにしては難しい筈の彩人の頭部に拳銃が付き付けられ発砲される。それは、自身では手の付けられない加速度的に積み重ねられる苦しみを、他からの「手」で強制的に開放して欲しい願望と受け止めたけれど。

劇中、「回想」を絡めた手の込んだ長回し撮影とかも幾つか仕掛けられていて。アイデアを尽くそうという気概は、そうやって散見されるのだけれど。こちらの期待としては、頭から尻尾まで、やり切れない憤りのような「トゲが生えて」触れると痛い感情が疾走する感覚が伝わってきそうな映像との邂逅にあったのですが。「あんのこと」同様、目に触れにくい、社会のひずみの間に堕とされた若者にスポットをあてているものの、告発や訴えとも受け取り難く。

「見知らぬ者たち」と複数形にはなっているけれど、彩人から、周りの人達には、抱えた感情が伝わらずに、立ち消えになって。独りの「見知らぬ者」の悲劇で、収まってしまって。

小競り合いがあった時のまま、店内の電気も付けっぱなし。そして、ビール瓶で殴られた流血が床に残る状態の店に、大和も弟も別々に訪れて。悲劇の事件性に気が付くまで行かなくとも、彼らが、単に彩人との思い出に浸っているのか、自分のこれから先の事を考えているのかが分からず。彩人が、悲劇で「途中退場」させられて、彼の残像すら作品に漂わないのが、致命的に思えます。製作者の皆さんで、出来上がった脚本を検討して、この若き監督のステップアップを熱く激しく導いて欲しかったかなと、勝手に思いました。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 シネマ2にて

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