mixiユーザー(id:20808806)

2024年09月29日23:42

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「Cloud クラウド」を見て。〜それでも、また積り上がる不信と悪意が明日の光明を遮り圧し掛かる。〜

富や力を持ったネジの外れた輩が、捉えた弱い者を標的とするマンハンティング(人間狩り)の状況というのは、世界的統治者、狩猟民族、銃社会だからこそ描かれて来て。アジアの東端の小国で、農耕中心に、建前では自衛の必要のない社会環境だから、本作後半に現われる廃工場で、銃を携えての「のるかそるかの凌ぎ合い」に始まって、それが無かったように閉じられる「狩り」の見せ場は、先に書いた通念からすれば、正にフィクションの極みなのですが。

全く関係の無い発作的感情や一方的な他人の思い込みだけで、相手の痛みよりも参加者の不満のハケ口や歓びの為に「ゲーム」を立ち上がるかのように簡単に実行に移してしまう事の心理や環境に恐ろしさを、まず覚える。

ネットを通して、被害者に遺恨もゆかりも全くない見知らぬ者たちが集まって凶行に及んだ事件報道が幾つも聴かれますが。多分、それらは本作に描かれている様子で実行に移されるのだろうと見做してしまいます。ただ、こちらの場合は、首謀者たちのガス抜き的に暴行の対象となる被害者は、謂れのない善良な人ではなく、「転売ヤー」稼業に打ち込む吉井という男である。

他人に使われるのがイヤだと云って、工場の勤務を辞めて。自らの力で対価を得るのではなく、利ざやを転がし続ける過程に囚われ、恋人、上司、先輩等々他者に本心を悟られないよう距離を取り関心を寄せさせず。お金を生む商品を探す嗅覚とそれをモノにする熱意はあるけれど、自分自身の心底で望むものが無く、それに対しての自制や働きかけといったお金の価値では換算できない事には意識は働いていない。ただ、転売のサークルを回す「動力機械」の如く、心は閉ざされている。

そんな吉井なのに、運命の歯車は何度と調子を狂わせる。敢えて、あの様な顛末に持って行ったのは、山奥の廃工場の敷地で起こったマンハント位のドンパチでは収まらない、社会を揺るがす大きな災禍にも繋がりかねない時代のきな臭さが漂い続けている事を観客の肌感として触れさせたかったのか。車の行く先を、ずうっと雲が重く圧し掛かっているかのように不穏な画でしたし。

これから先の不穏を想起させる吉井の胸の内を引き出した、あの人物は、好都合な守護天使というより、差し詰め滅びに導く悪魔じゃないでしょうか。

去年の今時分は、天パーで風変わりだけど根は好人物の大学生探偵だった菅田将暉さんでしたが。初タッグとなるこの黒沢清監督作品を、楽しみにしておりました。心情を簡単に明かさず。危険な仕事をやっている割には、ワキも甘かったりして。ごく普通に居る気遣いに欠ける今時の青年で、それなりに立ちまわっているのに、悪意をかってしまうウケ身に回って。役柄のふり幅の大きさを見せつけております。

なかでも、吉井を転売に引き込んだ高専の先輩村岡に扮する窪田正孝さんとの、胸の内を互いに明かさずに、無意識的に優位な立場を取り合う心凍る関係性を繰り広げる二人の芝居に、巧者ぶりが現れていました。

あと、「MOTHER マザー」で、長澤まさみのお母ちゃんに操られていた奥平大賢君が、先輩に張り合うまでに、成長されていたのも喜ばしかったです。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン 劇場�い砲董�

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