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2024年08月12日00:26

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「ツイスターズ」を見て。〜シティガールになりきって、傷心に蓋をしていたけど。故郷の暴風銀座に引き連れられて、竜巻を飼い慣らしたい気象オタの血が再び沸き立つ〜

お目見えした本作の「下敷き」となった1996年製作の「ツイスター」について、あらためて旧作の記事を読むとクラッシック映画にあったスクリューボール・コメディの要素を、竜巻を追っかける男女の関係に掛けたとかあったけど。見た当時は、そんな素養も無いし、売りである「ジュラシックパーク」の原作・脚本家と「スピード」の監督が手掛けるのだから、予算を掛けたスペクタクルに、活劇描写を受け入れる心積もりで居たのだが。真っ先に思い出されるのは、凄まじい風力に地べたの牧草から、空高く竜巻の頂きへと持ち上げられる乳牛の姿が、哀れみより可笑しみが上回って見えたのがまず印象にあって。

そんな、はかなげ記憶に比べると、竜巻と、消滅させるためにその中に突入して巻き上げさせる球体以外は、全く継続性のない「再起動リブート」作でありますが。怪物、クリーチャーと違って、意思も本能も無い自然現象との対決を核に据えるために、登場人物の「心の傷」だとか因縁付けによって、捉え難い脅威をお話に引き入れて。自然現象に対して挑戦の試行錯誤の経過と併行して、過去の傷を見つめ直し現実に向う心持ちと、登場人物間の対立と連帯関係が入れ替わる様が展開と巧みに連動して、何か久方ぶりにキッチリ出来上がった仕立て感の手応え。

ホリデーシーズンに投入される大作として、多くの人を引き付けるべく良くお話が練られているうえに、前作から大きなブランクを経て、視覚効果も格段に上がって、車両や追跡小道具やギミックも有効性を増して、CGだけでなく、セットも組んでグレードアップしているうえに、出て来る「人間」が大作のツマミ的存在に添えられがちなところだけど、魅力あふれる演者が見事に引っ張っている。元ネタ映画よりも印象強さを増して、面白さではサマーシーズン作品では、上位にランクされるべきかと。

本作の鑑賞動機には、その牽引力の先頭に立つケイト役のデイジー・エドガー=ジョーンズさんの出演もありました。一昨年見た「ザリガニの鳴くところ」の印象が、強かったので。ひと昔前ならコケティッシュで明るく人当たりがヨサゲな白人女性が主役を張る時代でしたが、時が過ぎて使い古しの人物像となりました。整ってスマートな容姿の奥には、他人には言えない「闇」を抱える一方、秘めたこだわりや自分の世界をもっていて、見た目通りには明るいと言いきれない「影」が隠し切れない。先に書いた「心の傷」の件は、彼女演じるケイトにまつわるものです。

研究費狙いの学生チームを率いていたケイトは、竜巻の襲来の前に皆を鼓舞したりしていましたけど。その後の出来事は、彼女が向き合う竜巻が如何に高い障害かを植え付ける意味でも効果的なツカミでした。

ノースカロライナ州の湿地帯から、だだっ広いオクラホマの無防備なほど開けた平野と場所は移動しても自然との結びつきが強く、ネグレットや男からのDVを受けていたけど、本作では母親が目立たずとも面倒みが良いのはともかく、トラウマを抱えさせられ。湿地帯での生きる術を磨き、住処では標本だとか周辺の研究観察も怠らず。対して、ニューヨークから里帰りして、迎えられた竜巻データ集積会社の仲間に「タンポポ占いで、調査進路を決める女子なんか付いて行けない」なんて陰口叩かれ。実家の納屋には、学生時代手造りした、竜巻被害シミュレーションの箱庭模型があったりして。

「ザリガニ」といい、「ツイスターズ」といい、強引に例えるなら宮崎駿巨匠の過去作のナウシカを連想させて。風を読んで、愛機のグライダーに乗り、城に戻れば、他人には知られない様に地下の植物園に、環境を侵している「腐海」の研究場所を設けていたりして。なんか、登場人物が2.5次元化している訳ではなかろうけれど、ハリウッドとの距離が狭まっている感もなきにしも。今日のトレンドに倣って、クライマックスには、ケイトが見定めた使命を達成すべく、竜巻の中に果敢に攻め込んで行って。極東の小国に寄り添うかとみせて、自国の「典型」へと転じる。茶系色のタンクトップにグラサン掛けて、なんか、「ターミネーター」のリンダ・ハミルトンが、被って来るのが芸歴の到達点になってしまわないか余計な不安も過りますが。

英国出身女優の先輩、シァーシャ・ローナンさんに、米国女性監督グレタ・ガーウイックさんがついた様に、このままブロックバスター作品に身を任せるのではなく、独立系女性監督とインディペンデント系作品に転じないかなと。オリビア・ワイルドさんか、この前見た「パストライブス」のセリーヌ・ソンさんとか、同性の監督の庇護の元アート系の作品で一辺、名を成して、地道に根を張って欲しい。

アート系と云うと、本作の監督リー・アイザックチョンさんも、見なかったけど「ミナリ」って韓国系米国移民の小規模作品を撮った方が、巨大予算の大作を撮って、まずは求められた「商品」に仕立てて興行結果を出した事に驚きでした。中には、アート系から志をもって大作を撮ったものの失敗する方も散見される中、その適応力に敬服します。

このリブートの脚本が、デカプリオ様オスカーゲットの「レヴェナント」を手掛けたマーク・L・スミスさんとは言え。クライマックス、避難した映画館では、製作主幹の一社ユニバーサル映画の代表作「フランケンシュタイン」が掛っていて。そのスクリーンを竜巻に破らせて、主要人物や避難民を脅かします。過去の歴史を破って、今、面白いものを見せるって心意気の表明にも見えて、低予算の映画製作から、違う次元の映画製作局面を開いたようにも取れました。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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