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2024年02月07日23:39

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「千年女優」を見て。〜映画の時代を駆けた一途な想いは、宇宙空間をも貫く強く確かな軌跡を描いて飛んで行くのが、きっと誰の目にも映る。〜

アカデミー賞の候補作に上がっている巨匠だけが、世界に知られた我が国のアニメーション監督ではないとでも、高速スピーカーで、世間に鳴らしたくなるくらい。2週間限定でひっそりと終わった本作の再上映で、遅まきながら初めて今敏(こん さとし)監督作品を劇場で見届けて、これまで文章だけで目に留めて来た完成度の高さを体感する。映画撮影の「思い出」の断片が、たった一つの願いのために被写体として、目に写る通り現場を駆けてゆくエネルギーによって、終幕を迎える頃には「うねり」をはらんで、ヒロインの行動が純粋に響いて来て。胸の内に仕舞っておくには勿体ない、そんな気分に満たされる。

我国の映画興行を支える、このジャンルにあって、本作は、稚気や愛好家しか寄せ付けない体裁から距離を取る、オトナの映画好きが触れるべきアニメーション映画です。

30年前に引退し隠遁生活を送っていた伝説の女優藤原千代子から、ドキュメンタリー映像の取材の許しを得た製作会社の立花は、カメラマンと共に終の棲家がある鎌倉へ向かう。取り壊される撮影所から託された藤原の所有物とされる「鍵」を立花が渡す。それは、当時思春期真っただ中の千代子が、交わされた約束を果たすために必要なモノだった。いつ果たされるかも定かでない約束を実現しようと、彼女は映画の世界に身を投じたのだ。鍵を手にして意を決したかの彼女から語られる「逸話」に、近い年齢である故か入れ込む立花に対して、思い入れのないカメラマンは傍観者で居たのだが。

決して心に決めた事を周囲には明かす事無く出演を重ねた彼女の想いと、それに感応する聴き手と撮り手2人の思い入れ。それに、映画界の隆盛と時代の流れに、証言の虚実も相まった「回想」に、見る者は取り込まれてゆく。

冒頭のキャストロールの背景画で、出演作や撮影時の時代がインタビューへ向かう道中の景色にオーバーラップさせて、うつろいや変貌が暗示される導入部から、見せ方の「手の内」が紹介されている。時代々々に合わせて製作された日本映画の数々を、千代子の体感・経験の現れである映像は、出演作ごとに背景や彼女のいで立ちを継ぎ目なく変化を繋げて。スターへと駆け上がる彼女の「勢い」を、立花とカメラマンの視線を通して我々にも実感させると同時に、目まぐるしさの中、そこに、10代の頃交わした「約束」が一本の太い筋として確かに通っているのが、露わとなって来る。

一昨年、「蜘蛛の巣城」を見ていたので、千代子がコスチュームプレイの如何にも重厚そうな時代劇撮影で、焼き割かれるあるイメージとか、戸惑う事なく容易に刷り込まれました。

絵に描いてしまえば、ストーリーの展開も簡単に覆せて、力ずくで大団円をまとめ上げられる都合の良さで、容易く観客に感動を与えられるこのジャンル。千代子の「約束」も、劇中どういう帰結を迎えるのか、伏線による何らかの製作者の「見えざる手」を発動させてしまうのか、映像の展開に心奪われながらも、気がかりだったのですが。

我国の映画史を駆け抜けるという、たいへん大きな視点の作品の構えに関わらず、1人の女性の人生経験から得た「答え」として、飾らないうえに、至極真っ当な結論が導かれて。宮崎駿巨匠の「千と千尋の神隠し」と並ぶ文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞獲得に相応しい劇中のアーティスティックな映像表現を損なわないどころか、タイトル通り一千光年の宇宙航海に臨んでも決して怯まない力添えを与えてくれるかの様に「これからも、大丈夫」と、温かい肯定感に包んでくれます。

製作から20年も経っていて、もう声を聴く事が出来ない声優さんもキャストに名を連ねていますが。そんな中、現在も第一線で活躍されている山寺宏一さんが、千代子の「約束」に係る男性役を振られているのですが、あい変わらずのイケボでした。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン劇場�,砲董�

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