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2024年01月04日23:45

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「ほかげ」を見て。〜第二次大戦後から今も絶えない、大人たちの過ち〜

シリアスなテーマ故に「売れ線」の扱いには相容れない、ここ最近の「世に問う」塚本晋也監督作に、地方劇場では中々出逢う機会が無かったが。NHKの朝ドラ効果の集客を見込んでか、お目にかかる事が出来ました。

第二次世界大戦終結後の闇市を始めとする背景で予算が掛かるところ、背景があまり写り込まない閉鎖的なロケ場所を選び、限られたセットや、監督自らの手持ちカメラでの撮影と、大手企業らの製作委員会の後ろ盾も望めない分、視覚アイデアと人力の動員で権力による大規模破壊で傷ついた市井の人達の荒涼とした心象を、スクリーンに映るビジョンで体感させる。畳のささくれから、引いて行くと模型ではあるけれど、焼けた街並みが広がる様とか、孤児を思って動物園に出かける「ごっこ遊び」から、面倒見る側の大人が戦火のフラッシュバックで常軌を外れるまでの一部始終を追っかけて見せる辺り、大手製作の作品には無い、視覚を用いた訴えかけに塚本監督のオリジナリティがある。

戦火にあって、どうにか崩れずに残った一軒家で、食料と酒が足りない中、カタチばかりの飲み屋を営みつつも斡旋されるお客相手に体を売る女。そのお客の1人で、戦場で追った心の傷害に苛まれる元教師の帰還兵。闇市をはじめ焦土と化した日本で、誰もがその日の生活にしがみ付くのが必死の中、飄々とあたりを彷徨って、時に力なき者には面倒見の良いところも見せる右腕の利かない男。

朝ドラの「ブギウギ」では、ブギの女王としてこの大戦下を生き延びている趣里さんが女に扮し、店に寄り付く孤児への母性と家族を失った傷も癒え切らないところ、望まぬ営みで食いつなぐ。歌で人々を勇気づけるドラマでの役柄とは対照的な生命力の強さと儚さを体現。帰還兵役の河野さんも、塚本晋也さんと同じく、自らメガホンを握られる方ですが、減量もして本作に貢献されて。右腕の利かない男の森山未來さんも、荒んだ世界を承知で渡り歩く訳知りの顔の裏で、平和な世であれば芽生えるハズの無い「負の感情」に身を焦がして来た別の顔を表して、戦争がもたらす「歪み」を見せつけます。

いずれも、人生や芸歴で培った経験や知恵を持って、第二次大戦下に居たであろう人物像を映像上に創り上げているのですが。その大人達の行動を目の当たりにする、戦争孤児に扮した塚尾桜雅君は、平成生まれの10歳にも満たない子供なのに、如何にもカメラ外の大人達に導かれるまま撮って貰いましたって「やらされ感」が、全然なくて。つぶらな瞳を見開いて、大人が引き起こして、子供には全く責任の無い戦争下の不条理に向き合って、作品のカギを握る大役を果たして、なかなか見せつけてくれる。

さまよい出た闇市の外れの暗がりに群がる帰還兵の中に、見覚えのある顔を見つけて孤児が、彼から貰った教科書を置いて立ち去る。「学ぶ」事で、苦しい生活から脱する将来の自分を見た筈なのに、明るい将来よりも食べる事を優先しなくてはならない状況。そこに被さる銃声は、孤児が劇中唯一理解できた、大人の心情だったに違いない。隣人が、思いやりの心をもって寄り添い立ち直るとか、生易しい人情論では済まされない戦禍を見せると同時に、当時も、そして今の世界での紛争に馳せれば、大人の言い分では、とても取り繕いきれない惨状に晒されるのは、か弱き子供なのである。


拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン 劇場��にて

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