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2022年06月26日22:44

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「シン・ウルトラマン」を見て。〜「再構築」を愛好家の満足では済まさない、天上からの視点。本当に銀色の巨大外星人に愛される存在なのか、人類は。〜

「アオイホノオ」と云うドラマで、主人公であり原作者の大阪芸大時代の同級生として安田顕さん扮する庵野ヒデアキが、自作自演の「ウルトラマン」を撮って、学内にあって、映像のセンスで明らかに「違う才能」を見せつける件が記憶にあって。他にも数々の「伝説」を、アマチュア時代から打ち立ててはいるけれど、実際の作品は、本人のエピソード紹介で、数秒拝んだ事はあるけれど、流石に見た事は無い。

去年、苦心苦闘の末、めでたくケリをつけた「シン・エヴァンゲリオン」ですが、1、2作目で、「箱根」を舞台に、汎用ヒト型兵器が、使徒らと繰り広げる巨大な物体の立ち回りの見せ方、送電線の鉄塔との対比だとか、地上から仰ぎ見た時の「あり得ない対象」を見上げた時に受け取れる、それの「大きさ」の実感のさせ方に、ミニチュアセットの中で、着ぐるみを着て、巨人や怪獣を顔出し出来ないスーツアクターの方達が見せていた「特撮」を連想させました。

それで、コロナの延期を経て、お目見えした本作。作り手には、「シン・ゴジラ」同様、樋口真嗣氏が、監督だから、庵野氏が徹頭徹尾目配せした作品では無いだろうけれど。非公認アングラ製作から、この円谷プロ公認の作品に至る訳だから、まさに本望成就。凡人なら、想像止まりなのが、才能を伸ばし、名も馳せた末に晴れて、本家お墨付き作品を任されどう魅せるのか、羨望と共に臨みました。

オリジナル作品に流れていた交響曲に載せて、間を置かず、我が国に襲来する巨大生物に、その対応を指揮する政府各省庁から寄せ集められた特別編成班、通称「禍特対(カトクタイ)」が、なんとか食い止めて来た経過を立て続けに挿入し、作り手の思い入れ深い「あの頃の世界観」を、現代に呼び起こすまでテンポも良く、見せ方を心得ておられる。場数を踏む過程で、禍特対の手には、次第に負えなくなって、いよいよ国土に甚大な被害がもたらされるかと云うその時に、謎の銀色の巨人が、初めて大地に立つのです。

こうして四つ足歩行の「禍威獣(カイジュウ)」との対戦場面では、幼少の頃TVで見たシリーズの記憶も呼び起こされたりしたけれど。耳に入っている限りでは、昔、夢に生きる製作会社の大人達が、茶の間の子供に見せる為、着ぐるみ着たり、ピアノ線で空高く飛翔するヒーローら巨大生物の模型を宙に吊ったりして創ったりせず、CGの加工で作品の中に、空想の生き物達を息づかせていて。登場の場面でこそ、重量感というか、「実体」はあったけれど。去年見た、完結した四部作の方のが、巨大な物体が地上を動き回るスケールを実感した印象が強い。

若き頃思い描いた物語世界を手に入れても、何度も見せ方を繰り返すに留まらず、更に違う表現を模索していて、安易な懐かしの頃の「再現」には、決して、踏みとどまったりしたくはないのかも。ウルトラマンが、東京駅の丸の内ビル側での「一戦」で、敢えて高く飛び上がらずに、ネオンの輝きを反射する、ガラス張りのビルの間を縫って飛ぶ姿を見せていたけれど、あれは、着ぐるみでも、模型でなく、デジタルの実体でなければ、映像化できなかっただろう。

そういう事で、手掛けたアニメーションから、勝手に想像を引き継いでいた箱庭的ミニチュアセットでの巨大生物に見立てた人間大着ぐるみプロレスに回帰することなく、有名キャラを使って、次世代に向けて、新手法の実写ベースでの活かし方を模索しているようで。TVの放映時間縛りの象徴カラータイマーに、ウルトラマンの中のヒトの存在を匂わす背中の「チャック隠し」を消して、銀色の巨人の完璧な実体を見せたけど、巨大な生物たちの衝突に血が騒ぐ事無く、冒頭以降は、冷静にスクリーンを見つめていました。

でも、禍特対の構成員の1人、売れっ子女優のあの方が、外星人の高度な科学力によって、日常のスーツ姿のまま巨大化されて都内のビル街を闊歩するシークエンスがあって。ちよっと、知性が発展途上の少年期に在りがちな低俗的SF発想を、先端的テクニックで再現したのには、自分も根っこに近いものがあって、特撮的場面では、2番目に目を引きました。

半世紀前の伝説的ヒーローを、当時のエピソードを現代的に再構築して、多くの観客に見て貰うのに、思い入れや見せ方に入れ込んでしまっては、そっちの事情通にしか訴求しないし。そういった意味で、名のあるキャストが組まれるし、また、それが出来る点で、作り手達(庵野氏に監督の樋口氏以外にも、「エヴァ」で見かけるスタッフ名があるので)の、出資者からの評価の高さの裏付けでもありますが。

「シン・ゴジラ」同様、今の時代に合わせる為に、外星人からの侵略を受けたら、どのように、国が対応するかを現実的視点からアプローチを掛けていますが、本作は、前回ほど突き詰めてない分、ジャンルものとして入り込みし易いです。ただし、ゴジラと命名された未知の巨大生物の対処を押し付けられた、省庁から派遣された落ちこぼれやハミダシ者たちが、各自の特性を発揮して、日本に迫った危機回避に立ち向かう流れが、作品の推進力になったのに対して、禍特対メンバーに纏わる描写が、弱かったかな。

「侵略」のエピソードが、連綿と続くので消化しやすいように、見易くしている分、メンバーたちの関係が「深掘り」が足りなくて。銀色の巨人が、人類への愛着を深める切っ掛けとなるには、もう少し、演者の見せ場があったらなと思ったりもするけど、尺を考えたら仕方ないのか。なので、贅沢なキャストの使い方をしているのかも。禍特対のリーダーの西島さんも、直近では、別の出演作がオスカー外国語長編作受賞したし。マニアな作品の浸透には、有難い出演。「きのう何食べた?」の続き製作が、中々目途付かないのも、あらためて納得。

政府を代表する、閣僚たちも、顔で存在感が滲むベテラン脇役陣を、配していて。「帝都物語」の魔人加藤に扮していた嶋田久作さんが、首相役を拝しているのにも、感慨を覚えます。「シン・ゴジラ」で、野心的政党幹部に扮していた竹野内豊さんが、本作で、政府と禍特対の調整役として、顔をのぞかせていたので、また、何かの「シン」で、お目に掛かれるのかしら。

いろいろキャストについて好き勝手書き連ねましたが、一番の役得は、たまたま日本に降り立って政府と「地球進出」交渉をするメフィラス星人の地上での「姿」を演じた山本耕史さんでしょう。整った外見、物腰の低さで、外星人の本当の意図をカモフラージュしていてもおかしくない「怪しさ」を何処となく覗かせる好演を披露。四文字熟語とか引き合いに出した後、「私の好きな言葉です」と、付け足すフレーズを、会話に際して繰り出すのが、また、役のアクセントになって。

セリフで、キャラクターを印象付けるのは、日本のアニメーションの得意手法ですが、作り手の意図と演者が、巧い具合にハマって。ウルトラマン変身前の斎藤工さんと、居酒屋で、互いの腹を探り合いながら、酒を酌み交わす場面の終わり尻の山本耕史さんの締めのセリフがまた、高度文明を持つ外星人らしからぬものだけど、普通にそういう場では出て来る一言で、地球外生物による侵略を描く意味合いにも合致しているうえに、可笑しさも醸していて、演者の見せ場を創っていましたね。

アマチュアである大学時代の思い入れを、商業映画として単純に焼き直し、オリジナル作品の頃の回顧に留まって、愛好家受けで終わらない、今後の視覚表現も見据えた意欲作のうえに、見ごたえある作品でした。そう思わせたのは、何より、たまたま日本に降り立った、外星人の高度な科学力を象徴する、「巨人化装置」をめぐる交渉に、地球上の国際上の駆け引きだとか、他国よりも優位に立とうとする人類の浅はかさが、炙り出されていたから。まさに、現実に起こっている紛争に、思いを馳せてしまう。

「光の国」は、自分が幼少の頃見たウルトラの兄弟達の遥か宇宙の出身地であるけれど。本作では、「光の星」に改められていましたが、そこからの使者ゾーフィは、外星人との経緯から地球をせん滅しようとして。この立場の変わり様にも、驚きましたが。劇中、ウルトラマンは、斎藤工さんが、地上で猛威を振るう禍威獣に子供が巻き添えになるのを、自らの命と引き換えに窮地から救い出したのを見て、侵略の脅威に立ち向かう決意をしたのですが。本当に、守られるにふさわしい存在なのでしょうか、全宇宙から見て人類は。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
シネプラザサントムーン 劇場��にて。

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