ミュージカルシークエンスで、演者や群衆を巻き込んで沸き立つ熱量。そして、歌や動きにカット、背景も含めた創造力の鋭さや流麗さに、目を奪われて。やがてその興奮は、「世に出る者は、消えゆく」さだめに、鎮魂のムードへと移って行くのだけれど。
長き時代をへて、命を吹き込まれたハミダシ者二人に、他者を認め、共感することで、更に高まる「ここに、いる」意義を、シミジミ噛みしめさせてもらいました。御存じない方には、十把一絡げのジャンルものなのでしょうけれど、エンターテインメント性と製作意識の高さからも、見る価値ある一本です。
監督の湯浅さんは、これまでも過去に手掛けた作品において、音楽劇的なシュチュエーションを取り込んで来て。話の展開や状況が差し迫ったり、追い込まれたりした最中、アニメーションの創られたビジュアルの世界で、動きや、色彩、音楽と立体的な見せ方で、メインキャラクターが周囲を巻き込むシュチュエーションで、幾つも見せ場を作って来られました。
古川日出男さんが、知られざる室町時代の能楽師である犬王を紹介する原作を用いて、モデルが、知られざる人物である事にのっかり、現代の我々が馴染む、音楽や舞踊の「様式、表現」を総て総動員させて、ポップスターに仕立て上げ、平安時代に、理不尽に亡くなって行った者達を歌や踊りで「評伝」させて、ひと握りの権力者に抑制された市井の人達を狂乱させ巻き込む「状況」を、劇場作品に相応しい絢爛さで魅せます。
音楽に、セリフやストーリーを語らせる純粋なミュージカルでもないので、そのジャンルも苦手な方にもフィットするかと。映像もストーリーも独りで背負うワンマン製作でなく、脚本に、「罪の声」やTVドラマ「アンナチュラル」の野木亜希子さんが手掛けたお陰で、客観性が入って、テンポもいい。
音楽の大友良英さんは、多様な音の嗜好性を網羅して苦心が偲ばれます。「ピンポン」の映像化で気心触れている漫画家、松本大洋さんのデザインしたキャラクターは、一連の動きから止まった表情や容姿が映えているし。
何より、犬王と相棒となる盲目の琵琶奏者の友魚(ともな)に声を吹き込む、アブちゃんと、森山未來さんが、ドンピシャのキャスティング。それぞれ、音楽や舞踏での経験もあって、音に声を乗せるのにも、テレだとか、ズレだとか無くて。表現者ならではの「呼吸」が、ありありとして、監督のビジョンの創り上げに、十二分な貢献。
異形の能楽師と、盲目の琵琶奏者と云う事で、実体でなく、描かなければ見せられない表現もさることながら、「才」を持った者でなければ、知り得なかったり、共鳴し合ったりする「感覚」を視覚化するという事でも、湯浅監督作品ならではの「カラー」を持ち合わせているのですが。それゆえに、権力者から、庇護を受けられず、存在を消し去られた悲哀が、色濃く映りました。
ともかく、ミュージカルシークエンスに圧倒されてしまって。今度は、「歌詞」の部分も含めて、シッカリ受け止め味わいたいです。
拙文にお付き合い頂き、有難う御座います。
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