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2022年04月03日07:48

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「ガンパウダー ミルクシェイク」を見て。〜カッコかわいい成分調整済モチーフを混ぜ合わせた、ミルクシェイク。あっさりなのは、引き締めの火薬風味が、薄いから。〜

火器の威力に、故郷から追われる人達を日々報道で見ていて、銃撃戦をみるのは如何なものかと、一瞬、見るのを躊躇って。それでも、気を惹くものにあがなえず出かけました。

事前の知識無く、劇場でこの作品の予告を見たのです。図書館の司書の女性たちが、ジェーン・オースティンとか、ヴァージニア・ウルフとか、カウンターの女性客に、お薦めの豪華装丁本を差し出し、その厚い表紙を開くと、輪郭に沿ってページが繰りぬかれた本の中に、拳銃が収められていて。荒唐無稽で、空中分解しかねないドンパチものを、ウイットで知的に締めた意外な拾い物になるかもしれない予感も走った事もあって。

その予告で、3人の女性「司書」たちに、「貸出本」のお薦めを受けていたのが、ビッグバジェット作品の脇役を経て、小規模ながら主役の座を射止めたカレン・ギランさん扮するサム。ファームと呼ばれる暗殺組織の名うてのヒットウーマンである。実は、サムの母親スカーレットも、シングルマザーで暗殺者だったのだが、何かのワケあって15年前組織を抜け、組織の幹部で母娘と係わり深いネイサンにサムを託して、姿を消してしまっていた。

以来、サムは、母親と同じ道を歩み、独りで生き抜いてきた。ネイサンとは、ダイナーで落合い指示を受ける。何時ものように出向くと、彼からファームの資金を持ち逃げした経理担当の始末と回収の依頼を受ける。逃走者を見つけ出し、口を封じて資金も回収して任務完了のハズだったのだが、殺した男が資金を持ち逃げしたのは、誘拐された8歳の娘エミリーの身代金として、ファームの敵対組織からの要求だった事をサムは知り得てしまう。自責の念なのか、残されたエミリーに自分の生立ちを重ね芽生えた庇護心か、エミリーの手を取って、サムは、彼女を一人前にした組織はじめ、掟と利害をタテに襲い掛かってくる男たちに立ち向かう。

あらためて、本編の粗筋を起こすと、反社会組織の追手から少年を守って逃走する女性ジーナ・ローランズを描いた「グロリア」だとか、殺し屋稼業から足を洗う最後の依頼でのアクシデントで失明させた女性クラブ歌手の手術費捻出のため再び依頼を引き受ける暗殺者チョウ・ユンファが体を張る「狼 男たちの挽歌最終章」だとか記憶に焼き付いた同系の作品に連なりそうな「匂い」もしなくも無かったのですが。

過去のガンアクション、クライムストーリー作品を彷彿とする衣装や格闘の振り付け等のエッセンスに、予告にあった、裏暗黒社会ならではの便宜を図るシステムだとか、血生臭さの「消臭」を狙うポップ感を醸し出す狙いなのか、サムやエミリーが身にまとう、妙な日本字ロゴがあしらわれた、「しまむら」とかで売っていそうなチープなスエット類も、日本人の我々からすると、活劇のアクセントにも、笑いのツボにも至らない不発弾で。作り手の趣味や、思い入れをつぎ込んで、楽しんでいるのだろうけど、散漫で、取っ散らかった印象。

サムらを、抹殺しようと押し寄せる男たちが、銃弾やサシの勝負で返り討ちにあって、多数なぎ倒されてはいるが、目に映る殆どは、顔があって無きに等しい「ヤラレ要員」なので、命の重みも伝わらない「存在」の軽さ。アメコミものを殆ど見ないので、そこで脇役出演していたカレン・ギレンさんが、初見だったけれど、シェイプアップされた長身の彼女なので、立ち回りやガンファイトのコレオグラフが映えるのを見せるためには、とっととヤラレてしまう敵役大勢扱いの方が、都合が良いのかもしれない。任務失敗から、ファームが差し向ける現場要員が、サムから「3バカ」(「JunkHead」かってぇの)とナメられる、腕の立たない男たちですが、コメディ要員としても、1度ならず2度まで出番を割くのは、構成上勿体ないような。

主要人物に、それぞれ敵対する相手側の存在を設けて引っ張った方が、終盤まで筋が通って、溜飲が下がっただろうに。ともかく、日常生活の報道を見て、事実の重みを取り違えてしまうような錯覚を引き起こす不安とは無縁でした。

フィクションなんだし、現実世界の息苦しさの解放で見に来る人達をもてなしてくれるのが作品に課せられた任務である訳だから、作り手の監督が、楽しみたい、魅せたいものが伝われば、それでいいのだけれど。冒頭に書いた予告編の図書館の件は、殺し屋稼業に必要な武器の調達から、逃走資金の用立てまで賄ってくれる、「よろず屋」みたいなもので、アンダーグラウンドな世界を描く、映画や小説だとかフィクションには、しばしば出てきて。作品世界に引き込む、売出しポイントだったりして、本編の中でも捨てがたい部分だったりします。

タイトルのミルクシェイクとは、殺し屋たちに重宝される「図書館」はじめ、本作で、監督が見せたい、アレコレを混ぜ合わせた、シェイクしたという製作意図であると同時に、主人公サムの好物で、任務完了の区切りであり、15年前の別れ際に母親とダイナーで飲んだ想い出の一品なのだ。女性たちの痛快な暴れっぷりを楽しむ本編の展開上、ドラマ的な事には深く触れられて無いので、ミルクシェイクに対する考察も、見ている者の受け取り方でしかないけれど。

前半でも、実例としてあげた作品も、確かに、エンタテインメントとして「見せ場」が売りではありますが、それも含めて、母性の覚醒だとか、良心の呵責だとか、アクションと共に、キャラクターを通して見えてくるものがあるからこそ、「見せ場」が映えるはず。ミルクシェイクを、サムとエミリーで、初めて味わうとか、再会した母親と、再び飲み交わすとか。わざとらしい説明的な会話で、遠回りしてテンポを悪くする必要はないとは言え、最初の方で、甘さと脂肪分を含んだ、火薬の煙や血糊とは無縁な「消えもの」を出したのなら、それを活かして、話に「芯」が通って、見る方も、より入り込めたかも。

とは言え、本作を見るもう一つの目的、ミシェル・ヨーさんの立ち回りを見たかったから、不満は御座いません。「図書館」の司書の1人でしたけれど。宣伝では、シスターフッドで、片付けられていましたが。追手を引き連れて、エミリーを連れて駆けこんで来たサムの為に、ひと肌脱いで、虐待しに来た男どもを蹴散らす。母親のスカーレットからの係わりがあったにしても、サムの助太刀を買って出たのは、司書のお三方にとっては、割に合わない感じもしたな。

ちょっと前に見た「クレイジーリッチ」では、世界的規模の財を成した振興アジア人家長としての貫禄を体現されていたミシェルさんですが、やはり、「ポリスストーリー3」で、くたびれ加減が見えていた(おっと、今も現役だったか)ジャッキー・チェンの相棒として、主役を凌駕する活躍ブリが、忘れられません。モトクロスバイクに跨ったまま、併行して走る貨物列車に向かって、乗り物ごと飛び乗るまでを見せた吹替え無しのワンカットは、鮮烈でした。本編の監督も、それを見ていたらしく、彼女を起用出来た事に興奮したとか申していたのも踏まえて、本編を見に出かけたのです。

欧州の出資で、本作はドイツでの室内ロケが、多くを占めていました。見せたいものとか、作り手の思い入れの多いそれぞれのシーンを撮り上げる苦労を忍びつつ見てはいましたが。室内が多いですから、監督が、ミシェルの過去作、ジャッキー映画にもリスペクトした場面を設けたとインタビューで答えていたけれど。バイクに跨る、大掛かりで開放的な場面は、室内撮影が多い本作には、見当たらず。そのかわり、ヤラレ要員首に巻き付けた鎖を手すりにかけて、そのまま、階下へ鎖を持ったミシェル姉御が飛び降りて敵をハングアップする、日本人には、「必殺仕事人」の中条きよしさんが披露した「技」を見せて貰って、より彼女への親近感が、増したのでした。

噂では、本編の続編の製作が決まったらしいですが。ミシェル・ヨーさん含む、闇の「図書館」の描写割合を、増やしてくれるのなら、参戦を前向きに考えましょうか。

拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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