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2015年12月29日01:51

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昭和歌謡モドキの心地良さで釣って、魂(こころ)まで連れていかないで。〜「リザとキツネと恋する死者たち」を見て〜

クールジャパンとか、たまに日本への傾倒ぶりを見ると、鏡を己の目前に差出された様に、薄ら気持ち悪さも感じたりしますけど、この映画では、なんと云っても、キーとなる、ちょっとホコリを被った風の歌謡曲調で、かつ、散々身近で聴き倒している、英語交じりの日本語の歌で、ヒロイン同様、浮足立たせてくれる。この日本ビイキは、もろ手を挙げて、受け入れたいです。

日本人に郷愁を感じさせる全体の風味に、「隠し味」として、この作品のウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督が、那須を訪れた時に惹きつけられたと云う「九尾の狐伝説」、帝を誘惑して、日本を乗っ取ろうと、美女に変身した狐の伝記を忍ばせて、70年代の共産圏のブタペストを舞台にしているだけに、「抑制」にもがく30歳女性を、ホンワカ解き放ってくれる、耳にも目にも心地よい、大人向けのおとぎ話でした。

療養施設での働きぶりを気に入られたリザは、寝たきりの日本大使未亡人の影響で、陳腐な日本語の恋愛小説と、往年の歌謡曲スターのトミー谷の歌をこよなく愛している。30歳の誕生日を迎えたのに、住み込みで未亡人の身の回りの世話に追われて、自身の「春」が訪れる気配もなく、気がつけば自身にしか見えない、トミー谷の「亡霊」と歌う事で、寂しさを紛らわしている。

未亡人から、誕生日に何とか貰った2時間の休憩の間に、未亡人が息を引き取り、遺言で住む場所を確保して、我が身の春を現実のモノにしようと、乏しい恋愛知識を駆使して、「いいひと」を捕まえようとするも、リザに係った男たちは、不慮の死を迎えて、この世ともおさらば。彼女が夢に見る、男性からの「最高の贈り物」を得る事が出来ず。トミー谷の亡霊は、彼の曲を流さない事が在ると、何処か他所で活動している様だし、相次ぐ不慮の死に疑念を持った警察は、堅物の中年捜査官ブルタンを、彼女が経済的に困っている事に目を付けて、護衛を兼ねて同居させる。

やがて、リザは遺品から見つかった、「九尾の狐」伝説を知って、自分の身の周りに起こる不慮の事故と重ねて、自らを責め思いつめるリザ、彼女がシロである確信を積むうちに、彼女に惹かれ「献身」の度合いが高まるブルタン、そして、段々と「本性」を現す、亡霊のトミー谷。三人 ? の思惑が、重なって起こるのは、愛の奇跡か、それとも絶望の虚無か。

まず、監督が、小西康陽さんや、大滝詠一さんの企画アルバム(名前の由来となった、トニー谷のも手掛けている)を聴き漁って、音楽監督と、デッチあげた「歌謡曲モドキ」を歌わせる、架空の魅惑の歌手、トミー谷に、成り切る日本人ハーフのデビッド・サクライさんが、イイです。

元々は、アクション系の作品が多いらしいですけど、すらっとした体格に、気障っぽい緑の襟なしスーツと眼鏡が映えますし、一見リザを見つめる顔付きは、優しさを漂わせながら、彼女のいないところで、別の邪悪さを秘めた顔つきを見せて、つかみどころ「シッポ」を見せません。

映画では、ヘンテコ歌謡をラジカセで掛けると、リザの目の前に出て来る「約束」みたいですけど、昔風のマイクを磨きながら、スイッチに手が掛って、出番を待ち構えていて、音楽が掛らず、フェイントを喰らわされる件の、所在なさげな佇まいも可笑しい。

リザ役のモーニカ・バルシャイさんは、トミー谷と歌っているところとか、「サウンドオブミュージック」みたいな、家財をDIYしたドレスを身にまとった時は、役柄の30歳女性なりの快活さが垣間見えるのですけど、アップになると、設定年齢以上の加齢を感じさせます。後で知りましたが、監督のパートナーですってね。と、言われれば、納得かな。

日本語の小説の恋愛観にとらわれて、普段の付き合いから恋愛のプロセスを積んでいくのではなくて、目の前に現れる男性を片っ端から、下手なりに捕まえて行こうとする「拙さ」は、これまで、抑えつけられた生活を強いられてきた事を思えば、致し方ないのかも。また、対象となる、男たちが彼女以上に唯我独尊の道を歩んできた、彼女を超えるヘンな奴らだけど、「抑制」を効かせた世界観にキレイに収まって、スローペースな調子を始めは維持していくので、欧州の作品を見慣れてない人にとって、ペースが掴み難さを作品のはじめの方では、露見させています。

しかし、リザがお試しに、キッカケを掴もうとする男たちと同類と思っていた、堅物警官ブルタンが、リザに、「思い込みから解き放たれて、人は違う見方が出来る」と、彼女に示唆する辺りから、ターミネーターばりのタフネスさに磨きが掛かり、リザの理想のトミー谷の亡霊と、拮抗し出すところから、演者と映像と、音楽の歯車が、噛みあいだして、私も含めて、周りの客が、忍び笑いから、はばかる事のない大笑いに転じて行きました。

正確には忘れましたが、狐の亡霊を封じるには、無償の愛を示さなくてはいけないと、映画の語り部が喋りますが、亡霊を対峙する事で終わらずに、「共存」を計るところが、曖昧を好む我々日本人の気質にも、しっくりきます。「めでたし、めでたし」に終わるのですけど、ちゃんと、トミー谷の扱いにも、気を配ってくれていました。

「ロッキー・ホラー・ショー」や、最近では「マッドマックス 怒りのデスロード」の様に、熱狂的な観客が、劇中のシュチュエーションを、演出しながら、参加して楽しむ見方もありますが、この映画も、そこまで行かなくとも、トミー谷の歌とか、事前に歌詞を配って、一緒に、歌い踊る様になったら、また、楽しいでしょうね。あと、リザと同じように、ポテトフライを、マヨネーズにつけて、一緒に食べるとか。その位のファンも出る様に、新宿一館の興行から、広がる事をセツに祈ります。

相変わらずの拙文に、お付き合い有難うございます。
新宿シネマカリテ スクリーン2 にて

では、トミー谷さんの登場です↓
https://www.youtube.com/watch?v=MairIYiC8fE

劇中場面と、PV用の画像で、構成しています。
シングルが、欲しいなぁ。

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