専門学校で教鞭をとってゐた頃、雑談でよく「物価の推移」を話すことがあった。
子供らはまづ「家に風呂がない家」と云ふものを知らん。
「電話がない家」があった、ことも知らん。
で、話のネタにしたのは「レコードの値段」である。
ワシが音楽に興味を持った頃、1960年代の後半、レコードはLPで¥2500、シングルで¥600だったやうに記憶してゐる。
大卒の初任給が約¥30,000、ラーメンが¥100だった時代に、である。
ものすごく高価な代物であった。
ワシが初めて自分の金で買ったレコードは、KISSの「ALIVE2」であり、これが二枚組で¥3000もしやがったのには参った。
しかもそのジャケにはデカく、ジーン・シモンズの血吐き顔のアップが載っており、親にしてみれば¥3000も出してなにを買って来たんぢゃこの息子は!?と思ったことであらう。
現代、CDに推移したとは云へ、音源の値段はだいたいそこら辺りであらう。
それを思ふと、「音楽の媒体」の物価は、それほど変化してないのだ。
レコード(CD)が高価なものである、といふ考へは、子供らには実感しにくいだらう。
これをして「豊かな時代」と呼ぶのには抵抗があるが、貧しさ、といふものがよく分からぬままに大人になるから、金がない、と云ひつつもスマホなどにつぎ込む金は月2万、とかいふ訳のわからん事態が生じるのだ。
生徒が
「今月は(バイト代が)10万にしかならんかった」
とかぬかすのをみると殴ってやりたくなる。
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