右足のふくらはぎに、若い頃バイクの事故で作ってしまったケロイドがある。
ここは毛も生えず、痛覚もほとんどない。
すでに自分の皮膚ではない一部分、と認識してゐたが、ここも「蚊に刺される」といふ事を知った。
そして、刺されるとやはり「痒い」のだ、といふ事も。
事故後4〜5年は人前に晒すのが憚られるほどひどいケロイドだった。
プールに行くときなぞは、サポーターを巻いたりしてゐた。今ほど短パンは履かなかったので、それで事足りた。
やがてやはり此処も陽に焼け、周囲の色と変わらぬほどには退色し、今は『大きめの傷跡』くらいにしか見えない。
「刺青を消した痕のやうだ」と云はれた事もある。
とっくに死んでゐる、と思ってゐた部分が、痒い。
ムヒを塗布しても痒い。
生きてゐる、と云ふ気がする。
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