mixiユーザー(id:6327611)

2026年08月24日00:26

77 view

原題を日本語にすると「出歯亀」だけど、“のぞき見趣味”とは大きく違う不思議な映画でした。マイケル・パウエル監督「血を吸うカメラ」(1960)。

マイケル・パウエルというと、ハンガリーから亡命してきたエメリック・プレスバーガーと組んだバレエ映画などで一斉を風靡しました。僕は「戦艦シュペー号の最後」という戦争物が大好きですね。戦後すぐの日本で大ヒットしたのが「赤い靴」(1948)。バレリーナの脚を見たさに野郎どもが映画館に駆けつけたそうな。

そんなマイケル・パウエルが、単独で1960年に作ったこの「血を吸うカメラ」は、イギリス映画界で物議を醸し、酷評されたそうです。題名が「窃視症」であり、実際は科学者の父親から研究素材にされていたことなどから、三脚の1本にナイフを仕込み喉笛に突き刺す“死の瞬間”を16ミリで記録している若いカメラマンの話です。

この若いカメラマンを演じているのがカール・ベームで、有名な指揮者の息子さんだったはず。そして被害者役を、「赤い靴」「ホフマン物語」などの名花モイラ・シアラー(写真3)が扮しています。そもそもカメラマンの父親役でマイケル・パウエル自身が顔を見せているのも興味深い。つまりこの映画を、マイケル・パウエルは本気で作ったのです。

イギリスでは公開から5日目に上映打ち切りとなり、その後も公開されることはなかったようですが、アメリカでフランシス・フォード・コッポラやマーティン・スコセッシらが評価し、カルトの名作として定着したようです。僕も、「映画評論」誌が“ホラー映画ベストテン”を選出したときに10位に入っていなかったら、ずっと無視していたでしょう。

今見直すと、決して“窃視症”の映画ではありません。“窃視症”の映画ならヒッチコックの「裏窓」でしょう。この「血を吸うカメラ」は、ヒッチコックの「サイコ」と並び称されており、“異常な主人公”への思い入れが強すぎるとはいえ、なかったことにしてしまうのは大きな間違いだと思います。

アンナ・マッセイもモイラ・シアラーも、それぞれ魅力たっぷりに描かれていますから、きちんと評価してあげましょうね。なお劇内で撮影中の映画女優として、エレベーターで卒倒するシーンを演じているのはシャーリー・アン・フィールド。「戦う翼」なんかが印象的でした。

そして殺人鬼を追い詰める警部がジャック・ワトソン。「ワイルド・ギース」など戦争映画の鬼軍曹役が得意でした。また新聞販売店が秘密裏に販売している写真集などを実際に作っていたパメラ・グリーンがモデル役で画面に登場します。するとパパラッチが、“英国映画史上初の全裸ヌード撮影現場”の取材に潜り込んだらしい。

マイケル・パウエルはカメラの前で全裸を堂々と披露するパメラ・グリーンに感心したそうです。裸で勝負する女性の潔さに感服するのは、洋の東西を問わず当然ですね。ということで僕は、劣情に惹かれて見たこの映画を、きちんと高く評価したいと思います。見たくない人に見ろとは言いませんが、見て損のない映画だと思います。
3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年08月>
日 月 火 水 木 金 土
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031