mixiユーザー(id:20556102)

2024年03月06日05:06

110 view

「生産手段の私的所有の廃止」の後に何が来るのか?

「唯一、大規模な急進的社会、大胆な対策、つまり、私的所有の廃止、利潤追求の停止、国境の廃止、によってのみこの社会を救うことができるのである。」(ローザ・ルクセンブルグ 獄中メモ 1918年9月)
http://chikyuza.net/archives/132789

「現在の生活様式が人類の破滅に向かっているという現実はもはや無視できないものになっているが、資本主義は終わりなき過剰生産と過剰消費に対する代替案を提供することはできていない。」(斎藤幸平『マルクス解体』講談社 2023 p.8)「今日の地球規模の生態学的危機において、資本主義批判が不可欠であることを否定することはできないはずだ。だからこそ、マルクス主義の理論的洞察を性急に捨て去るべきではない。」(同前p.148)「資本主義的生産様式の克服は、労働者階級による生産手段の再取得を通じた私有財産制と搾取の廃止よりもはるかにラディカルなプロジェクトにならなければならない。つまり、アソーシエイトした生産者たちは、自由と自律を求めて、「資本の生産力」を生み出していた生産関係そのものを徹底的に解体し、再構築しなければならない。そうでなければ、資本主義後の社会でも専制的で、環境破壊的な生産が続くことになるだろう。」(同前p.235)

↓ミュニシパリズムのうた
https://www.youtube.com/watch?v=eT37Bn2ElU0
(岸本聡子「〈コモン〉と〈ケア〉のミュニシパリズムへ」=斎藤幸平+松本卓也編『コモンの「自治」論』[集英社 2023]第3章の注6で紹介されています。)

↓1時間13分〜 斎藤幸平が語る「コモン」のイメージ([対談]斎藤幸平×名和達宣「親鸞とマルクス」@真宗大谷派名古屋別院)
https://www.youtube.com/watch?v=VqpKSzFiY04

ローザのメモは社会主義〜共産主義を希求する者の初心だろう。私的所有の廃止、利潤追求の停止。すなわち生産手段の私的所有の廃止。資本主義の廃止。さらには国境の廃止、すなわち国家の廃止(滝村隆一の用語で言えば〈共同体−内−国家〉の廃止のみならず〈共同体−即−国家〉の廃止)。このメモを“祈り”の方位へ転換すればジョン・レノンが歌った「イマジン」だろう。その後の世界史のみちゆきにおいては、生産手段の私的所有の廃止によって成立した社会主義国家の下で、共産党幹部とエリート官僚による人民支配が横行し、20世紀社会主義は失敗に終わった(盛田常夫『体制転換の政治経済社会学』*)。その失敗の経験を経て、それならそれに代わるどのような社会変革があり得るのかが問われているが、まだその答えは見出されていない。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1985536639&owner_id=20556102

斎藤幸平は、国家の問題は脇に置いて、資本主義の廃止という方位は譲れないというポジションで論陣を張っている。彼は一方でマルクスのテキストの新たな読み込みの研究を続けて、20世紀社会主義の教科書に書かれているようなマルクス主義を変革しようとしている。それはかつて1970年代に盛行したマルクス研究の21世紀バージョンのように見える。1970年代の議論ではほとんど注目されなかった環境問題を前面に押し出したのが彼の功績だろう。それによって彼は、社会民主主義政権による資本の制御では問題は解決しない、ということを暗に強調しているのだが、ほんとうにその通りなのかはなお疑問が残る。マルクスのテキストの読み込みとそれを根拠とした理論闘争の場から一歩離れて、「脱成長コミュニズム」を思い描くくだりに至ると、彼もまた「斯くあるべし」以上のことを語ってはいない。資本主義の廃止への道程を見通すには、なお論じなければならない諸問題が残されているように思える。

一方で斎藤は、資本主義の廃止へ向けての当面のさまざまな動きを「コモン」という語によって方向づけようと試みており、特に「自治」が改めて注目されている。岸本聡子は東京都杉並区での最近の「自治」への動きを「ミュニシパリズム」という語の下に世界的な動きに呼応するものとして捉え、自ら当事者としてそれを実践している。岸本の議論には確かな手応えを感じるが、その一方で、例えば杉並区というエリアの規模は、フランス革命において井上すゞ(『ジャコバン独裁の政治構造』**)が論じていた「セクションの民衆運動」に匹敵するのではないか、という問いが残るだろう。「セクションの民衆運動」は国家権力を倒す力を持つことができず、ジャコバン独裁に屈服した。そしてジャコバンはボルシェビキの祖となった。というようにして、なお堂々巡りは続くのだろうか。
**https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1983959790&owner_id=20556102


【最近の日記】
「角川短歌年鑑 令和6年版」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1987097373&owner_id=20556102
「短歌人」の誌面より(185)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1987082595&owner_id=20556102
「短歌人」の誌面より(184)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1987076066&owner_id=20556102
0 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2024年03月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

最近の日記