ギリシャ語で本を読んでいたらアスリオス（αθλιοσ=athlios）という語に出合った。意味は�‐泙鬚瓩兇后⊂泙魍佑粗世伸∈て颪魘砲瓩拭�不幸な、むざんな、哀れな――であり�，留標�に対して�△里劼匹じ世錣譴茲Δ�印象に残った。�，六検広△六供后�
一見して英語の「アスリート」（athlete）の語源であることがわかる。アスレチックもここから来たのだろうし、「トライアスロン」は三つの「アスロン」（競技）と古代ギリシャ語そのままだが、この語には「賞品」の意味もある。古代ギリシャ人たちは、スポーツ選手が賞を獲るために競争し切磋琢磨することを讃える反面、努力にも拘わらず栄冠を得られない人を「むざんな」「哀れな」の形容詞として使うことをためらわなかった。スポーツとはそのように分かりやすいものだったのだろう。
これは現代でも変わらない。運動は体によい、などの認識は爺様婆様になって諦めた人種のもので、小さい頃スポーツを始める子どもたちやその親たちは誰もがこの子が世界的な選手になる可能性を夢見てよいのである。考えてみれば学校での勉強も似たようなものなので、あらゆるものが競争であり、人は物心がついた時からみな「アスリート」なのである。ただ現代では、栄冠を得られなかった人を「哀れな」「むざんな」とは言わず、「普通の」人と呼ぶやさしさに変わってきたようだが。
古代ギリシャは生まれた時に生涯の幸不幸のほとんどが決まってしまう社会であった。「良い」「優れた」「好ましい」を表す「アガトス」という言葉の第一の意味は「よい血筋に生まれた」であり、第二には「勇敢な」であった。戦争に明け暮れた時代の格差社会であることが言葉に現れている。運動能力の高さでも名のある貴族の子弟が名をはせただろうし、よき将の条件ともなったろう。そうした価値観が強ければ強いだけ「アスリオス」の二つの意味の乖離は大きくならざるを得なかったのだろう。
詩の世界は権力や金力には無縁だがわずかに名誉として与えられる賞がある。もらえたら「アスリオス」で、もらえない時も「アスリオス」である。愛を得た人も愛を得られなかった人も愛にかかわりがあるという点ではみな同じだという理論みたいなものであろうか。それに詩人は「不幸」「むざん」「哀れ」とは親しいので、「アスリオス」と言われても褒められていると錯覚する人が多い。幸せな分野といえる。
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