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2021年01月30日02:44

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私家版(地下版?)ゴジラ案:その24

*変貌

 機龍が湾岸に到着したとき、すでに水平線上にはゴジラの姿が見えた。こちらへゆっくりと、だが着実に進んでくる黒き半身に固唾を呑みつつ、省次はヘルメットの感度を上げる。それでも、機龍からの脳波は未だ検知されなかった。電源が切れた状態で格納されるたびに、機龍の中の脳も仮死状態に陥っているのだろうと省次は思った。背後の堤防の陰に停まった車から、自分を監視している山川と武部になど気づけるはずもないままに。
 するとゴジラの前方の海面があちこちで乱れはじめ、気づいたゴジラの足が止まる。瞬間、一斉に天へと突き上がる根の群れに向け溜めていた熱線を吐きつつ頭を一閃させるゴジラ。たちまち吹き飛ぶ根の群れを後目に背後に向き直るや、吐き出される熱線が海面から飛び出る根を瞬時に焼き尽くす。だがそんなゴジラの背後に伸び上がるさらなる根の大群! それらの先端が裂けるや一斉に吹き出される金色の噴射!
「熱線? まさか!」
 驚く省次の目の前で数多の噴射が命中した背が白煙を上げる。だが再び向き直った巨獣が憤怒の形相で吐く青い熱線! 一斉に爆散しつつ何もかも燃え尽きてゆくその威力。だが驚愕した次の瞬間、足下の海面がざわつくや湾内に倒れ込むゴジラ! 陽動に気を取られた隙に足を絡め取られたのだと気づいたとたん、地震さながらの揺れに省次もまた足をとられそうになる。踏ん張った瞬間、大きく盛り上がる眼前の海面を割り屹立する、緑の岩山のごときその異形!
 全体を覆っているのは確かに見慣れた根だったが、前には茎と見えた上体はそれらを幾重にも捩り重ねた巨大な構造物と化していた。さらにその頂からもがくゴジラを圧しつつ睥睨する巨大な頭部。花としての特徴など微塵も残さぬそれがベリベリと裂け、顎としか形容できぬそれが獣としての己を証立てるもののごとく咆哮する! だがその巨大な余韻を縫うように悲痛な叫びが耳に届く。
「だめよビオランテ! そんな姿にならないで。それじゃ獣に、おまえがゴジラになってしまう!」

 左手の突堤で叫ぶ白衣の姿を見て取るや駆け寄る省次。だが、振り向いた相手を見たとたん殴られたような衝撃に足が止まる。容貌こそ保たれてはいるものの顔は緑に染まりきり、細い首には葉脈のような筋が顎に向かって浮き出ていた!


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