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2021年01月24日13:52

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2021年1月11日のコンサート

 今年初めての演奏会を昨年末と同じ地元のみつなかホールで聴いてきましたが、実に色々と考えさせられたコンサートでした。では当日の曲目や演奏陣からご紹介します。

「池田洋子ピアノリサイタル」
 〜演奏活動60周年記念演奏会〜

ショパン(ロイ・ダグラス編曲)「レ・シルフィード」抜粋
 マズルカ第44番ハ短調 op67-3
 前奏曲イ長調 op28-7
 ワルツ第7番嬰ハ短調 op64-2
 ワルツ第1番変ホ長調「華麗なる大円舞曲」 op18

ショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」
     変ホ長調 op22

ショパン「ピアノ協奏曲第2番」へ短調 op21

 池田洋子(P)
 大阪フィルハーモニー交響楽団/牧村邦彦

 ご覧のとおりのオール・ショパン・プログラムで、最初に管弦楽、次にピアノ独奏で前半が終わり、20分休憩を挟んで最後の協奏曲を演奏というものでしたが、2曲目は後半のポロネーズにオーケストラも加わって演奏できるよう書かれているもののピアノだけで全曲を演奏されることも多く、ここでも後半に協奏曲を置いたためかピアノ独奏曲として弾かれました。池田さんは演奏活動60周年ですからお歳も察せられるわけですが、1階席から拝見したお姿がいまは亡き母方の祖母とそっくりで、懐かしさのあまりちょっとうるっとしてしまったり……。

 そんなわけでまずオーケストラの曲目で始まったわけですが、驚いたのは大フィルの巨大編成! このホールは小さなホールでかつてパイヤール室内管弦楽団の最後に近い来日公演をここで聴いたことがありますが、チェロ2、コントラバス1の室内オーケストラが芳醇な響きで楽しめました。そんな会場の舞台から溢れそうな今回の大フィルはチェロ10、コントラバス5なのでほぼ5倍の大軍団! 音量は多少加減されたようですが、それでも完全に飽和状態で軽やかさや洗練味からはほど遠かったのがとても残念。そもそもこの「レ・シルフィード」という曲はショパンのピアノ独奏曲を1907年にバレエ振り付け師フォーキンの依頼でグラズノフが編曲して誕生したもので、2年後にフォーキンがディアギレフのバレエ・リュス設立に参加したときも記念すべき旗揚げ公演の演目に入ったものでしたが、物語らしい物語はなく詩人の周りを風の妖精シルフィードたちが軽やかに舞う情景を表現したというものだけに分厚く混沌とした響きで聴くことになったのは惜しまれます。けれどなぜこんな無茶をと考えれば事情もおのずと察せられ、コロナ下で減少した演奏機会で大所帯を賄うためには、おそらく選抜メンバーだけで演奏するという選択肢はなかったのでしょう。なにしろこの曲、LP時代にはそこそこ録音もありましたがオリジナルがより尊重されるようになった今は録音されることもめっきり減り、こんな曲を実演で聴けるのはこれが最初で最後だろうと思って聴きに来ただけに残念さには拭い難いものがありますが、これもコロナ下の音楽界の苦境の反映と思えば致し方なく、そういう意味で記憶に残りそうな光景となりました。
 なのでこの曲についての少しおめでたい話も付け加えるなら、ここで披露されたのはグラズノフの編曲版ではなく、そのグラズノフ版でこの曲が初演された1907年に奇しくも生を受けたイギリス人作曲家兼ピアニストにして編曲家だったロイ・ダグラスが1936年に編曲したものが使われているのですが、このダグラス氏、音楽は独学で身につけたそうなのに、トーキーになったばかりの映画界に数多くの音楽を提供したばかりかアディンセルやウォルトン、ヴォーン=ウィリアムスの助手を務めた果てに、なんと2015年、107歳まで存命だったというのですから、コロナ禍の現状ではクラシック界のアマビエとお呼びしてもいいのではとさえ思います。それも101歳の時に収録されたインタビュー動画も残されているというのですからただただ驚きです。そんなダグラスの編曲はグラズノフ版とはそもそも選曲から異なるというもので、グラズノフの5曲と共通するのはワルツ第7番嬰ハ短調ただ1曲だけ。それに別の6曲を加えた全7曲という体裁ですが、この日の演奏会ではそのうち4曲が第5曲、第1曲、第6曲、第7曲の順番で演奏されました。

 というようなオーケストラの状況を思えば、2曲目の「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の後半にオーケストラが加わらなかったのはこの会場では良かったです。池田さんは小柄な体格まで僕のおばあちゃんとそっくりですが、それでもコンサートグランドの響きは非力さなど微塵も感じさせない充実しきったもので普段はいささか大げさに思えるこの曲のタイトルそのままの大演奏! ブラヴォーに続く大拍手も当然の出来映えでした。ピアノの置き場所だけ楽員数が減らされた協奏曲も少し飽和状態が緩和され聴きやすくなっていましたが、それでもショパンの若書きがチャイコフスキーみたいな鳴りっぷりでした。

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