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2020年12月29日13:50

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後日談 東京国立博物館にて

最近は年の瀬になると、なんとなく上野の国立博物館に行きたくなる。
ここは年末意外に早く休館に入ってしまうので、仕事を調整して、木曜に休暇を取って出かけた。
昨今は時間指定の予約制となっているため、休日でも混雑の心配は全くないが、気分的に平日にゆったりと出かけたかったのだ。
ちょうど、『日本のたてもの』という特別展が始まったところだったが、今現在私が持っている年間パスには特別展の入場券がついていない(=平常展のみ何度でも入場可能)ため、チケット購入して特別展を観るかどうかちょっとだけ迷ったが、もうしばらく会期があるので、今回はとりあえず平常展だけじっくり観ることにしようと思った。

お昼前にのんびりと到着して、普段はまっすぐ右手の東洋館へ向かうのだが、今回は、いつも特別展の会場となっている平成館を目指し左手の方に進む。
現在は大規模な特別展がなく、平成館の2階は閉まっている。
わずかに、椅子とテーブルのある無料休憩コーナーと、本館へ続く廊下の手前にある考古展示室が開いているのみ。
(いや、大型画面のある部屋では、首里城修復のようすを流し、首里城正殿の1/10の模型も置いてあったな。)

普段は考古展示室にはあまり立ち寄らず、たまに行っても埴輪や鏡をさらっとだけ観てあとは通過してしまうのだけれど、奈良で古墳や鏡をたくさん観てきたばかりだったので、この日はまずここを真面目に観ようと思った。
考古学系にはあまりピンとこない方だけれど、今なら普段よりは興味を持って観られるだろうと思ったし。


この部屋には、土器や埴輪、銅鐸、瓦、須恵器や支配者のアクセサリーなどが展示されている。
有名なハート形土偶がいつも座っているのもこの部屋だ。

ふ〜ん、と思いながら眺めていると、展示室の一角に、そこだけ区切られた暗い部屋があるのに気がついた。
壁沿いに、石人が一体置かれている。
石人といえばキルギスだよな、なんてことを思いながらこの部屋に入ると、照明を落としたガラスケースの中に、ひと振りの鉄剣が展示されていた。
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真っ黒に錆びてよくわからないが、つかに近い箇所に、馬、鳥、魚の象嵌があり、そこにだけピンスポットが当てられている。
ちょっとカワイイ。
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さて、とその部屋を出ようとして、出口近くの壁のパネルに目を遣ると・・・

刀に彫られた銘文の解説があって、「「治天下獲□□□鹵大王世」に始まる75字の銀象嵌銘文は・・」とある。
あれれ?ちょっと待て。これはもしかして・・・・!

急いでガラスケースに取って返し、プレートをよく見ると、「銀象嵌太刀 熊本県玉名郡和水町 江田船山古墳出土」とあるではないの!
江田船山古墳で出土した鉄剣には、ワカタケルの名前が彫ってあり、5世紀にワカタケル大王の勢力が、ここ熊本の地にも及んでいたことが証明されている、とは、このあたりをちょっとでも齧った人なら誰でも知っていることだ。
なんと!
もしかして?なんて言ってる場合じゃない。
こんな所に実物が展示してあったのか!
しかも、見ながらそれに気づかず、そのまま部屋を出て行こうとしたのは誰だ!!
オオハツセワカタケル大王は、自分に会いに初瀬まで来たくせに、実在した貴重な痕跡をたいしてよく見もせず去ろうとした私を見て腹に据えかね、襟首つかんで引きずり戻したというわけか。
命が助かっただけでも良しとせねばならぬな。
(あの時代の言葉で、「ちょっと待たんか阿呆」は、どう発音したのだろう。)

照明が当たっていないため薄ぼんやりとしか見えない象嵌文字を食い入るように眺める。
文字は、太刀の峰の部分に一行書きで象嵌されていた。
こういう時のために、博物館に来る時にはいつも単眼鏡を携えているため、そいつを取り出して一文字一文字を確認する。
・・・確かに、「治天下獲□□□鹵大王世」と書いてあるぞ!
ふぅ〜っ。観ちゃったよ。ワカタケルの(銘の入った)剣を。

東博の考古展示室にあったのは驚きだが、調べてみると、今月15日から、来年6月までの期間展示であるらしい。
参った。
実に参った。
ちなみに、西が熊本の江田船山古墳なら、東は埼玉の稲荷山古墳からも、同様の象嵌鉄剣が出土している。
ワカタケルの勢力が、少なくとも関東から九州に及んでいた、とされる所以だ。
(稲荷山古墳の象嵌鉄剣は、埼玉のさきたま史跡博物館へ行かないと観られない。)


この僥倖に興奮したままようやく部屋を出て、いやはや参ったなと思い続けながら他の展示を観ていたら・・・・

なんと今度は、石上神宮に伝わる七支刀と並ぶ宝物、鉄盾が展示されていた。
これは石上神宮から持ってきているもので、6月までここに展示されるらしい。
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   撮影禁止なので、石上神宮のサイトから拝借。

昨年、七支刀の実物はここ東博で観ているので、石上神宮の東西両横綱を、この一年で見たということになる。
やれやれ。
参りましたな。

興奮を静めながらミュージアムショップを覗いていたら、例の太刀の象嵌図のハンコが商品化されているのを見つけてしまった。
しょうがないな。
この僥倖の記念に、いやどちらかといえば素通りしそうになったことの罪滅ぼしに、300円もしないこのハンコを、ひとつ購めてしまった。
一体、いつ、どこに押すんだろうか、私は。

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(1)こもりくひとり旅
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(2)ワカタケルの谷
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(3)こぐこぐ自転車
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(7)古墳か仏像か
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