佐々木譲「抵抗都市」読了。
日露戦争の講和により、日本が事実上、ロシアの属国になっている世界が舞台。
警視庁の特務巡査、新堂は、西神田署の多和田とともに、堀留橋にあがった死体をめぐる殺人事件の捜査にあたる。
この世界では、日本の軍事権、外交権はロシアが持ち、帝国陸軍は参謀本部が消滅、師団も14個から7個に半減させられた。
皇室は存在し、日本語も話せるが、ロシアが本格的に日本を併合する不安と、日本がロシアから独立することを望む人々もいる。
第一次世界大戦が欧州で勃発、2年前に帝国陸軍2個師団が派遣された。そして今、もう2個師団派兵が目前に迫っていた。
新堂らの捜査に、警察の官房室高等警察、それにロシア統監府保安課までが興味を示し、反ロシア勢力にかかわりがあるらしい。
2日後の、派兵反対集会に向け、緊張感のある物語になっている。
佐々木譲さんには珍しい、SF的な設定だが、いつもの警察小説のテイストが活きている。
安倍龍太郎「迷宮の月」読了。
飛鳥時代、白村江の戦いで唐との国交が途絶えていた大和（日本）から約30年ぶりに遣唐使が派遣される。
執節使（代表）には、粟田真人が任命された。50年前にも長安へ留学経験がある。そして、唐と日本の国交回復を任務とするが、中国（唐）の冊封体制に入らず、皇帝と天皇を対等な関係にしたままでそれを行うという密命を帯びていた。
五島列島から中国にわたるだけで大冒険という時代、４艘の船団で発進するが、嵐に会い遭難、やがて中国に着くが、そこでは唐から則天武后が支配する周という国名に変わっていた。
主人公の真人は、60歳を過ぎているが、これは冒険小説である。ちなみに、真人の従者は、歌人山上憶良だ。
なお、ラストになって、引きのような謎が出てきて、「これは続編があるのかな」と期待させる。
いよいよ明日から、放射線治療。毎日通わなければいけないのがちょっとアレだがしょうがない。できることをやるしかないな。
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