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2017年09月06日09:38

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「パターソン」という映画

昨日、映画「パターソン」を観てきた。私の場合、好きな米詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズに関係があると聞いて行ったのだが、そのあたりが分かりにくいので、ネットの映画宣伝程度の説明を。パターソンという片田舎の地名と同じ名前のバス運転手(既婚)が主人公で、詩を書いている。ノートに書いているが発表はしていない。そして彼はC・ウィリアムズの詩を愛している。という設定なので、C・ウィリアムズの伝記等とは関わりがない。

カーロス・ウィリアムズに長詩『パターソン』があることに気付かされたのはマイミクさんの日記を読んでであった。それでこの詩人に関係あるのなら観にいかなくては、となったのだ。C・ウィリアムズが主人公ではないのだが、この映画を観た人は彼の詩を読みたくなるというふうにできている。日常の中にあることが詩になるという信念が底流に流れているからだ。映画はむしろ詩ではないものを淡々と描く。それを詩に書くシーンももちろんあるが。映画そのものが様式化されて進むのも詩の連のようである。

日本人(永瀬正敏)が出てくるが(この出演はけっこう有名らしく観ていないカミさんも知っていたのでネタバレではないと信じる)、彼は詩集『パターソン』のでっかい日本語対訳版を持っている。こんなのが出てるのか、と驚いたがこれは映画用に作られた小道具だそうだ。本物についてネット書店を検索したら二種あって一つは売り切れ、もう一種は5千円台で売っていたのでついつい注文してしまった。

在庫切れの思潮社版へのワケのわからぬアマゾンレビューを発見。買えなかったせいか図書館から借りて読んだという感想。「豊かな表現力ではあるが難解。私たちの感性には沿わないものが多く、ディキンスンやホイットマンのような共感性を求める方にはおすすめできません」と、★1個。親友だったエズラ・パウンドなどの前衛性と比較するとそんなに難しい詩ではないと思うがモダニズムの旗手の側面もあり、読む人によってはそう感じるのかとも思う。

私が最初に彼の詩を知ったのは大学時代『詩学』に連載されていたウィリアムズ論を読んでであった。あいまいな記憶だが、どこぞの庭のテーブルに私と少女が座っていて、蟻んこが歩いていく。そして私は紳士である、というような数行の詩が印象に残っている。

映画の感想は書かない。米詩を読む会の二次会で感想を言おうという話になっているので。ディキンスンもあるのでこの秋は話題が多い。同会でも英語で読んだことのある(辞書を一回も引かなくても読める)有名な詩が、映画の中で朗読されたのでご紹介。

  ごめんなさい

アイスボックスに
入っていた
プラムを
食べちゃった

それは
たぶんきみが
朝食用に
とっておいたもの

許しておくれ
すごくうまかったんだ
とっても甘くって
とっても冷たくって  (原成吉・江田孝臣訳『前期詩編』から)




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