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2017年08月22日18:53

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エピソードEX5(リレー)その11

マイミクの綾華☆☆様のコミュニティにおけるリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』に更新がありましたのでお知らせいたします。

なお綾華☆☆様のコミュは下記のアドレスです。シリーズ本編をご覧になられる場合はこちらへお回り下さい。参加は綾華☆☆様の承認制ですが、申請はどうぞお気軽に。

「ZERO Another BALLAD」
http://mixi.jp/view_community.pl?id=5150160&_from=subscribed_bbs_feed


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EXリレーエピソード『から騒ぎの感謝祭』
MF

take-11

January 26th PM08:35

 星宮め、完全にB・i・R・Dを牛耳ってやがる……。

 内心そう呟きつつ、正面モニターに大写しされた女隊長の輝く笑顔に向け語るダークスーツの背を睨む織田。言葉遣いこそ慇懃でも話す内容をありていにいえば、B・i・R・Dの失策により市も少なからぬ被害を被った以上B・i・R・Dには市の復興に協力する義務があり、金銭面の拠出ができないならばイベントの目玉になっていただくという客寄せパンダの役回りを押しつけるも同然のことなのだ。B・i・R・Dジャパン号令たるその身の数多の武勇に照らせば面白い話のはずがなかった。いまや完全に笑顔にあてられ調整卓にかじりつく映像マン今川に見えずとも、生き馬の目を抜くテレビ業界をフリーレポーターとして渡り歩く織田の目には視えていた。慇懃無礼の手本のような夢野市市長の言葉の一つ一つにこめかみが微かながらも痙攣するさまが。その動きに織田は、織田だけは気づいていた。女神にも例うべきそのかんばせに秘された魔神めく凶相の存在を!
 にもかかわらず女神の使徒と化したも同然の今川渾身の手腕がものをいい、中継映像からは魅了の魔力が溢れ出るようだった。ブロマイドでも出せば飛ぶように売れるだろうし、今ごろ局にはスポンサー連からあれをなんとか我が社のCMにとの電話も山のようにかかっているはずだ。いかな魔術を使えば数多の怪獣や宇宙人との死闘を勝ち抜いてきた地球随一の阿修羅をかくも見事に封印しうるのか。その目が市長に向けられている以上手品の種を握るのは星宮! となればどこからともなくやってきて人工島と一つの市を築き上げたその大魔術にも必ずやB・i・R・Dとの癒着ゆえの大仕掛けがあるに違いない。それを暴き出せて初めて俺もまた井上のような生ける伝説となれるのだ。なにがなんでも貴様の秘密、暴き立てずにおくものか!

 残念ながら織田の嗅覚を以てしても、今川たち映像スタッフが女神の下僕と化した今、カメラに映らぬ情報の存在はあまりにも大きいものだった。鬼相を覆い隠した女神の笑顔が市長に向けたものでないことも、ましてモニターの彼方で起こらんとしている恐るべき事態も彼に知るすべはなかったのだから。だが……。


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 中継映像に映らない位置、真柴リーダーの真後ろのタカフミをいまや恐怖が鷲掴みしていた。
 戦士としての経験に磨かれた危険を察知する勘。確かにそれは戦いの場では欠くべからざるものである。それあればこそ彼らは迫る敵の存在をいち早く察知し、万全の体制で迎え撃つことも、必要なら回避することもできる。戦いに生き残る確率を文字通り左右するものこそこの能力にほかならない。
 ならば戦うことも逃げることもできぬものが相手だったら? タカフミはいまや痛感していた。そんなことを自分が考えたことすらなかったのを。戦うことも逃げることもできぬままいち早く危険だけは察知する。それは迫り来る恐怖に誰より早く気づき、誰より長く怯え続けることでしかないではないか。哀れな隊員は恐怖のただ中で己がうかつさを呪っていた。
 しかもこの恐怖はタカフミが自分で招いたものなのだ。会見に先立ち真柴リーダーの尋常ならざる怒気を察知した彼は本来なら標的たるべき市長がモニターの彼方にいる以上、自分たちがそのとばっちりを食う危険を的確に予測。なんとかそれを封じねばと焦りに焦った。そして天啓が閃いたのだ。リーダーの怒りを逸らせるのは広い宇宙にテラ一人だと。だから自分はテラを呼びつけ怒りの爆発をみごと抑えた。そして安堵さえ覚えたのだった。
 だけどそれは浅はかだった。テラを前にしたことでリーダーの怒気は確かに正面への途は絶たれたが、それは鬱屈し一層剣呑な鬼気と化したものが背後へ、自分たちの方へ溢れ出てくる事態を招いたのだから。濁流の前への流れを阻めば後ろへ向かうぐらいなんで気がつかんのやこのドアホ! といくら脳内で自分自身の胸ぐらを締め上げても後の祭り。いまや磨かれた戦士の勘は常人なら見ずにすんだはずの邪気が黒々とした蒸気のごとく女隊長の背後に膨れ上がり、巨大な鬼面を形作るさまを恐怖に見開くその心眼に映しているのだ。彼は思った。こんな目に遭うんやったらB・i・R・Dになんか入りとうなかった! それはもはや魂の叫びだった。
 絶対こんなん一人でなんか耐えられへん。頼りになるのは仲間だけやと右のソラに縋ろうとしたまなざしは、だが弟を凝視したまま放心している兄を映した。明らかに平常心を失っていた。
 左のサヤに目を向けると拒絶のまなざしが待っていた。まさか私に尻拭いさせる気? 男ならいさぎよく逝ってきなさいっ!

 そして無情にも、会見は終わりを告げた。


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