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2017年02月27日15:50

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紀州

先日、長嶋南子さんから同人誌『きょうは詩人』にゲスト作品を依頼された。2月末が締め切りなので明日送信すればいい。しかしふとメールアドレス知ってたっけ、と思い電話したら「ごめん、今パソコン壊れてるから印刷して郵送して」となった。

締切日の前に数日分の郵送期間をみて投函するという、遠い過去の亡霊がよみがえったのだ。明日までぐずぐずしてギリギリに完成させて…という目論見は一気に吹き飛び、テキパキと詩を完成させプリントし、封筒に宛名など記しポストに行き、戻ってきた私である。やればできるではないか。

昔、渋谷卓男さんが詩作について講義をしたとき、詩を推敲していると永遠に終わらない。だから締め切りで完成とするしかない、と言っていた。締め切りが引導を与えてくれるということだろう。その時点で、読み返すとまだ手を入れられそうな気がするというのは、確かに永遠に終わらない気がする。他方、一度形にして手放してしまうと、後で書き換えることが非常に困難なのも事実である。締め切りで手放す前までは詩はマグマのようなもので、変形可能だが、締め切り後というのは温度が冷めて固体化してしまうので、容易に変更を加えることができないからだろう。硬い石をノミで削って形を変えなくてはならなくなり、無理をすると壊れてしまう。

詩を「これ以外にない」という揺らぎない完成形で提出できる人は、締め切りまでの間に、調整した時間の風をうまく送って、マグマを冷ますことができる人のように思える。本日の私は「今パソコン壊れてるから印刷して郵送して」により、鍛冶屋が赤く焼けた鉄を水に突っ込むような形になった。例の落語の「キシュー」である。紀州ではなくて奇襲だったような気もするが。


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