mixiユーザー(id:1041518)

2016年12月02日22:15

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宛名は太平洋

今日気に入った言葉。

「そこの船、アッホイ、こちらピークオッド号、世界をめぐる途中だ!これからの手紙はみんな太平洋宛にするよう伝えてくれ!」(メルヴィル『白鯨』53章「アルバトロス号」八木敏雄訳)

ところ番地がぎっしりつまった日本列島をまず考えたあと、太平洋にはそれを何個敷き詰められるかを想像する。数百個か数千個か。しかも陸上の住所は動かないが、洋上の家は毎日場所を変える。だが、ともかく宛て先は太平洋。

比喩ではない。何年も遠い海にいる乗組員に届くことを願って手紙は実際に書かれ、船で運ばれた。届かなかったからといって抗議する人はいなかっただろう。船から船へと手渡されていった手紙たちがどこかで船ごと沈むことだってあったに違いない。

サン=テグジュペリは、飛行機で手紙を運んでいた。サハラ砂漠が宛先だったものはなかったのに彼は墜落して届けた……。やっぱり比喩だ。その時運ばれていた手紙がどうなったかと責める人はいない。それは星の王子様になったんだし、海洋を渡っていた手紙たちが白鯨になったらしいことはみんなうすうす知っている。
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