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2016年07月29日18:08

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しみ・汚れあり

人に勧められて図書館に申し込んだ小説が数ヵ月後に届いたので読み始めた。
出だしが面白いので、引き込まれる。そしてもっとゆっくり読もう、と思う。猛スピードで読めて、後に何かが残る本はまずない。始まったとたんにストーリーに乗せられてはらはらドキドキ進む物語もあるが、この本のように、その世界が何なのかを次第に理解しながらその世界に入っていかなくてはならない物語もある。その歩みそのものが豊かで、読む喜びを与えてくれる。その感覚が久しぶりだなぁと思い、これはたぶん傑作にちがいないと予感しているが、まだ読み終わっていないので、題名は記さない。

現在の舞台は洞窟のような居住区なので、未開時代なのか?と思ったり初期のキリスト教徒が隠れ住んだカタコンベふうか?とか外形的なことが最初は気になるが、そこに棲む人たちが、過去をすごい速さで忘れていくという叙述に入ってきた。だから主人公が今語っていることさえ、少し前のこともあいまいな忘却の雲に飲み込まれつつある。神話の中の数行のくだりが人間にとっては叙事詩の伝承になる、みたいな感じかもしれない。あまり詳しく書くと、「その本読みました」みたいな盛り上がりになっても困るのでここで中断。

ある世界を作っていくというのは、小説の作業なのだろうが、この本はどこと特定できない時代や状況を作っていこうとしている点で詩のように感じるのかもしれない。外形よりも人間の感じ方がいちいち面白い。それが普遍を通して現代につながっている。すぐれた作家はみなそうだが。

話がそれるが、その本の表紙に「しみ・汚れあり」という小さい紙片が透明なテープで留められていた。これは書物売買時に用いられる用語ではなかったのか。図書館の蔵書も今では、次の古本ステージでの評価チェックがなされているのであろうか。たしかにコグチ部分に直径8ミリほどの薄茶色のしみがあった(不注意者め、コーヒー飲むときは慎重にしなさい!)。ひょっとしてアマゾンのマーケットプレイスだと1円になってしまうのであろうか。暇な私は確かめずにはいられなくなった。「カバー傷みあり■小口シミあり■中古品になりますので経年劣化(略)」が641円。さすがにまだ人気新刊本の威厳を保ち、最低価格は550円であった。しかし私はタダだ(待たされたけど)。図書館よ永遠なれ。

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