探しもの
ここにあったはずの木がないことは
空にできた空白で気付くのだが
いなくなった理由は
地面に探さなくてはならない
ないことを証し立てるにも
あるものを使わなくてはならない
欠損と呼ばれる ないものが無言で居残る
あるものにつながろうとする記憶の欠片として
切り株の下には根が広がっていよう
根は樹木の口だと
古代ギリシャの哲学者が言った
動物なら口だけが空に浮かんでいるようなもの
食べても食べても
その栄養が養うはずの身体は消えてしまった
高く手を広げて枯れていった大木よ
あの空がおまえの棺だ
日記みたいに詩を書くことはできないタイプだが、毎日その脇を通るのが辛い、と言っていた楠が今日は見当たらなかった。カミサンと探して伐られたことを知った。よくあることとはいえ、ショックだったので、詩になってしまった。樹木がある日いなくなるという詩は前に書き、『冊』最新号に載せた(『冊』をお持ちでない方は
http://kamitelyric.web.fc2.com/month-poem-latest.html で見られます。スクロールして2015年12月)。それは物語ふうの幻想的なものにしたが、今日のは日記代わりの気持ちもあり直截的に書いた。これから糖尿外来に行くので時間がない。40分くらいで作ったにしては、詩らしくなったと思う。(写真左・枯れていったクスノキの遺影。写真右・根が口なら幹断面は喉あたりか。)
ログインしてコメントを確認・投稿する