オフィスの引っ越し作業をしていた折・・・友人の作家から陣中見舞いが届いた・・・
作品「とんでもない」・・・おそらくピンクフロイドのアルバムジャケットのオマージュかなんかなんだろうけど・・・この方は素焼きで原子炉を焼いたりとか・・・すごく面白い人で尊敬してる
「豚でもない」「飛んでもない」・・・まったくとんでもないものだ・・・
そのとんでもない作品に見守られながら・・・淡々と作業をしていた。
土曜日の事だ
数年前に酷い鬱になり2年間何も出来ない時期があった・・・横浜の元町にほど近い場所にホテル暮らしをしていた・・・にっちもさっちもいかなくなり引き上げてきて・・・そのままここに帰ってきた。
元町という街はおそらく僕が一番好きな日本の一角で・・・佐野元春さんのデビュー作「バック・トゥ・ザ・ストリート」のアルバムジャケットは元町の当時あったパピヨンというブティークの前で撮られていた・・・うる覚えだけど・・・
そんな思いを込めて・・・連作「アンジェリーナ」
その当時・・・ほんとににっちもさっちもいかず・・・どれくらいダメだったか?というと・・・僕の家から200mのところにローソ〇というコンビニがあるのだけれど・・・そこに行くためにタクシーを呼ぶほどだった・・・動けないのだ・・・貯金を切り崩したり、挙句にFXなんかで稼いだり・・・なんとか食い扶持をつないで・・・そんな中親父が死んだりとか・・・まあよく潜り抜けてきたなあ
そんな時に医者にやたらと散歩を勧められてね・・・じじ臭くていやだああなんて思いながらもぶらぶらし始め・・・大体、そういう時ってうつむいてあるいているのだけど・・・
路傍の石の造形に惹かれだして・・・散歩の度に石を拾うようになった・・・石というのは星の欠片そのもで・・・その何億年という成り立ちから堆積岩だったり変成岩だったり火成岩だったり・・・リュウモン、カコウ、アンザン、センリョク、ゲンブ、ハンレイ・・・
そのうち図鑑を求めて古本屋をめぐるようになったりとか・・・パワーストーンの卸売りの中国人と仲良くなったりとか
まあ・・・今もガレキを拾ってきてはせっせと絵を描いたりとか・・・やってることはそんなに変わらない・・・
そうそう・・・元春さんの名曲「ロックンロール・ナイト」の一節に「ガレキの中のゴールデンリング」というのがあってね・・・まあそれは芸術という行為そのものだと思うんだけれど・・ガレキそのものも見方によってはゴールデン・リングだ・・・
街がいくつも無くなった・・・・
多分信じられないかもしれないけど・・・被災地は恐ろしく何もない。
そして多分もっと信じられないかもしれないがどんどん何もなくなっていく。
何かを作るためではない。
行き着くあてもない。
ただ片付けているんだ。
未だに仮設で暮らす友人も多い・・・
精神疾患も増え、自殺も多い・・・
とりあえず僕に何が出来るんだろう?
さっぱりわからなかった。
とりあえず、絵を描いたり写真を撮ったり、ボランティアをしたり、仮設に行って傾聴をしたり・・・
レインボー・イン・マイ・ソウルという作品がある。正確にはあった。そして願わくば何処かに今もあることを祈る・・・これは僕が震災直後に手近にあった素材で作った・・・そう、ぐちゃぐちゃのこのオフィスにあるものでありあわせで作った・・・
この作品はどこかの仮設にあるはずだ・・・誰かが気に入ってくれて持って行ってくれた。
なくてもいいのかもしれない
この曲は佐野元春さんのサムディのセルフアンサーだ
そんなこんなでオフィスも大分片付き・・・車で閖上に向かう・・・
月蝕を撮りに・・・
きっちりと構図を確かめ・・・路面を確かめておく・・・
街灯がないからヘッドライトだけが頼りだ・・・
手前の被写体にヘッドライトを当てて、三脚を立て長時間露光をする。
ライティングが難しい・・・また、ジャンクで星を撮った事がある人はわかるだろうけど、ISO感度を上げるとノイズが出る。
さらに丁寧に撮ると、その分露光時間が伸びて星が流れる。
頃合いが難しいんだ。
写真の基本とは光が読める事、構図、瞬間を逃さぬ事。
シャッターが開いてる間はカメラにとっては瞬間だ。
長時間露光でも変わらない。
ちと、地蔵は甘かったけどね
ちょっと遠近感がわからないけど・・・この塔はかなりデカい・・・被災地にはこういう誰も見に来ないようなモニュメントがいつの間にかいっぱいできた・・・何もない荒野にこういうモニュメントがある。
一種異様な光景だが、未来には遺産になる
ちょっとお気に入りの地蔵がある・・・地蔵はちょっと経年劣化し、苔なんかが生えてた方がいいんだろうけど・・・まあいずれそうなると思う
ずっとこの場所を見つめてゆくんだろうなあ・・・なんて思うとちょっと頼もしい
月食の夜・・・鼓膜を押さえつける静寂・・・
行くあてがどこかにあるわけじゃないけれど・・・ここにいるわけにもゆかない・・・
地蔵じゃないからさ、腹も減るし金も稼がないと・・・
つうか、こえーよ!!マジで!!
アイム・イン・ブルー!この曲はホントにティーンの僕のアンセムだった・・・これをウオークマンに突っ込んでスクーターやチャリで海に行ったのだ
あの頃、よくわかんない喪失感を抱えてて、この曲の軽やかなタンゴのようなカスタネットのリズムですり抜けてた。
今もあんま変わらないけどね
ログインしてコメントを確認・投稿する