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2015年04月05日08:47

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リレー企画・続報の54

綾華☆☆様のコミュニティ「ZERO Another BALLAD」の設立2周年記念リレーに更新がありましたのでお知らせいたします。

http://mixi.jp/view_community.pl?from=home_joined_community&id=5150160

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<EXリレーエピソード「史上最低の侵略」>
MF

take-55

December 1st 23:40

 夢野市民病院の面会謝絶と表示された病室で、点滴を受けつつ眠っている白髪の青年たちが漏らす微かな呻き。それを耳にしたダークスーツの老人が、両の拳を青く光らせたまま呟く。
「そろそろお目覚めかな。あと少しかかりそうなのだが……」
 そのとき、その脳裏に響く涼やかな声。
>では手伝ってさしあげましょうか?<
 老人に姿をやつした異星人がまなざしを中空に向ける。
「ほう? 冥王星とはずいぶん遠くから」
 見えざる相手はくすりと笑い、言葉を続ける。
>そこの二人が作った偽のウルトラ戦士たち。他の侵略者たちはもちろん、地球人たちの手に渡ることも災いの種になりかねないと思っておいでなのでしょう? だから太陽へ投じるおつもりとお見受けしますが<
「これはこれは。どうやらお見通しのようですな。さすがはこの星の守り手だった方だけのことはある」
>私も思いは同じですから。この青く美しい愛の星にそのようなものは似合いませんもの。あなたの定めた軌道を維持するくらいでしたら喜んで手伝わせていただきますわ<
「ご協力まことに傷み入ります」
 会釈しつつ光薄れゆく拳をゆっくり降ろす夢野市市長。その時ベッドから掠れた声がする。
「……ここは……どこだ?」
「……どうして……ここに」
 まだ身を起こすこともできぬのか、呆然とした二つの同じ顔が目の動きだけで周囲を見回していたが、視線が老人に向くに至り猜疑の表情がその顔に浮かぶ。
「貴様は誰だ? 只者ではあるまい?」
「怪しい奴め、我らをどうする気だ?」
「怪しい者ではありません。ただの市長ですよ。それにしても、ずいぶん派手に街を荒らしてくれたものですな。本来なら損害賠償といきたいところですが、母星に戻りようもないのでは仕方がない。この際市のために働いてもらうとしましょうか」
「……なにをバカな」
「ふざけないでくれ」
「ふざけてなどいませんし、強制するつもりもありません。でもあなたがたは母星にもいい思い出はなさそうですし、先のあてもおありではないでしょう? 独り占めしようなどとさえ思わなければこの星で、少なくともこの市で暮らすことは誰にでもできるのです」
 得もいわれぬ表情の互いの顔を見交わす双子たちに、異星人の市長は言葉を続ける。
「むろん市の契約職員ですから高給優遇とはいきませんが、まあ真っ当に暮らせば食いはぐれることはないはずですよ」
 たちまち二人の腹の虫が競い合うかのように病棟中に響き渡るのだった。


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December 2nd 10:00

 かくて昨日旧湾岸通に突如として出現したガラクタの山、その麓に今日は長蛇の列ができていた。大半が一応人間の姿をしてはいるが、ほとんどがこのスラムの住人たる異星人たちである。
 列の先頭には机があって夢野市の筆頭書記が受付をしていた。契約書にサインすると市清掃局のバッヂをくれる。市長の指示でかき集めた資金を財源とするガラクタ一掃大作戦がいまや始まろうとしているのだ。列はどんどん進み受付をすませた者はすぐに手近なところから作業にかかる。なにしろ自分の家が埋もれている者も多いのだから当然であるが。
 やがて順番が回ってきたとたん、書面も読まずに質問を始めるご一行こそこの事態の張本人たるポンポス星人五人組である。
「これはむろん日当払いだろうな」
「一日いくら貰えるんですかい?」
「当然働いた日数貰えますよね?」
「だったらゆっくり働いたほうが」
「お弁当も出るんなら嬉しいなっ」
「契約書をちゃんと読みなさい。支払いはこのゴミの山が完全に片づいた時点での定額一括払い。理由はまさにあなた方みたいな日当だと先延ばしを図る輩が出るからです。それより」
 一斉にブーイングする昆虫人間たちを筆頭書記はじろりと一瞥する。
「街中ゴミだらけにした分際で金まで貰おうとは虫がよすぎる。あなた方は当然タダ働きです」
「あ、あいつら!」
「俺の家をメチャクチャにしやがって!」
「ぶん殴っちゃる!」
 たちまち殺気立つ人垣からあわてて脱出した自称侵略者たち。すると角を折れたところで、
「おい、ドースやないか。なに走りよんねん?」
 それは誰あろう、ドースの元雇い主にしてデタラメなソロバン術を伝授したメダルカレー社長タニマチだった。
「ちょうどよかった。戻ってこんか? 帳簿がめんど臭いねん。むろん銅箱の現物支給やがそれでええな? なんやったら他の人も来てくれてもええで。え? カレーばっかりもらっても困るって? ま、気が変わったら待っとるで」
 というわけでポンポス星人五人組は再びドースが持ち帰る具なしカレーにパンの耳の食生活に逆戻りしたのだった。そしてタニマチはドースの復職を期に「メダルカレーは宇宙人の社会復帰を応援します」との一文を外箱にちゃっかり加えたのだった。



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