『私的ゼロ外伝合作場』コミュにおけるケロンパ!ゴン様の物語が更新されましたのでお知らせいたします。森の奥の怪しき泉に辿りついた2人に迫る影という展開。どうぞご覧ください。
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「宿命の旅路」第3章 第3話「唄う女」
歩き始めて30分が過ぎようとしていた。2人は森の奥へ奥へと早足で歩いた。奥に進むにつれ、入り口付近のものより大きなエメラル鉱石が増えているせいか明るさも増し、時折まぶしく感じる事さえあるほどだ。一面緑色の世界。自然色と違うせいだろうか、木々が妙に浮き上がるように見え、枝は風になびき、自分たちの方にもたれかかってくる。
「なんかこの木、妙に枝も葉っぱも俺たちの方を向いてないか?」
レンがリオに話しかけた。
実際両脇に生えている木の枝は道側に向いている。やや斜めに木が生えているかのように、地面から約30センチくらい上から弧を描きつつ、道側に倒れかかるように立っている。
「風が出てきたせいでしょう」
レンの言葉を流すように答え先を急ぐリオ。
「なんかこの森に入ってから誰かに見られている感じがしてよ。けど振り返っても木があるだけでさぁ〜」
その後をレンの声が少し不安気に聞こえた。
「レンは意外に怖がりなんですね」
「怖いわけねぇーだろ! なんか気持ち悪い感覚っていうか」
怖がりなんて言われ、むきになり否定するレン。そんなレンを見て噴き出すリオ。レンは顔を真っ赤にして、笑うなよ! と口を尖らせ言う。そんなレンがさらに子供っぽく、妙に可愛く感じリオの顔も自然と緩んでしまう。ふふっと笑いつつ、だが吹き過ぎる風にリオの眉間にもシワがよる。森に入った時からリオもレンと同じ事を感じていたのだ。生暖かい風が2人の頬を撫でていく。
「何かに監視されてる感じは私もしていますよ」
「なんだよ、リオも同じじゃねえか」
「そろそろ時間ですしね。とにかく泉へ向かいましょう」
2人は小走りで奥へ奥へと向かう。
「……さびしいかい。。 1人はいやかい。。」
ざわざわ風に揺れる葉っぱ同士が触れあい、さらに道側へ倒れ掛かるように木が弧を描く。2人が通り抜けるごとに、退路を断つように両脇の木がせり出し、枝が徐々に壁のように重なりあっていく。2人は後ろを振り返る余裕もなく、ただ前へ前へ進む。囁くような声にも気づかずに。
歌が始まる前に泉へ着かなければ!
そのとき、鬱蒼とした木々たちにも終わりが見えてきた。緑の光とまた違う青白い光。
ついに森が開け、惑わじの泉が姿を現した。月光が泉を照らし、泉はその影を映す。
「歌は聞こえてこないよな〜」
手を上に上げ伸びをしながらレンがつぶやいた。拍子抜けもいいとこだ。月も満月、時刻は2時。条件はそろっているというのに、何も聞こえてこない。ただ風が通り抜ける音がするだけ。
「俺は炎のグレンファイアーっと」
鼻歌をまた歌いだすレン。
「静かにしてください、レン」
森を歩いていた時に感じた誰かに見られている感じも今はまったくしない。その静けさが逆に怖しい。
鼻歌を注意され、この妙な雰囲気と、暇をもてあますかのように準備運動をし始めるレン。
「やれやれ」
リオは泉を覗き込む。青く澄みわたる泉に自分の顔がぼんやりと映る。
月が真上にあるせいか彼の左隣に月が青くうつる。重なって映る自分の影。だが、さらに隣にぼんやり映る別の影!
驚き振り返るリオ。だが後ろには誰もいない。それでも泉には人影が映る。泉を覗き込むリオが目を見開いた。ただならぬその表情に、レンが何が見えるのかと聞いてくる。
「あなたには何も見えないのですか?」
「何って月とリオの顔に俺が映っているだけじゃねぇーか」
レンには彼の後ろの人影が見えていないのだ。
だが怪しい影はしだいに形がはっきりしてくる。そしてついにリオの眼前にあらわになるその姿。銀色の顔に口はなく、目の位置にはTの字を逆さにしたような太いライン。そう、それは紛れも無きミラーナイト自身の姿。リオ本来の姿であるミラーナイトの影が、彼自身の背後に映っているではないか!
さらに色鮮やかに泉に映える怪しの影。その目に位置するラインの赤が青き水面に浮かび上がる。それはかつてベリアルに闇の力を注ぎ込まれ変貌したミラーナイトの姿だった。ゼロの光により闇の力は取り除かれ、本来の姿を取り戻したはずの鏡の騎士。だが背後に立つ影は闇に堕ちたミラーナイトの姿だ。リオの肩は振るえ始め、両膝を折りその場に座り込む。そんな彼の背後で、似姿の赤い目がいっそう怪しく光る。リオはその光から目をそらすことができない。泉へせり出すようにかがみ込み、ひたすら泉を凝視している。
「いったい何が見えるってんだよ?」
訊ねてもリオからは何の返答もない。レンは周囲を見回すが、怪しいものなど見当たらない。
だが青き水面の中、リオの左に映っている月の中から、銀色の指が1本にょきり2本にょきり、3本、4本、5本と顔を出し、銀色の手がゆるゆると現われる。レンは泉の周辺を見回しているため、その異変に気づいていない。
さらにその手が伸びて銀色の腕となり、ゆっくり、だが確実にリオの方へと伸びてくる。だが泉を見つめているはずのリオもまた、奇怪なことにその腕に気づく様子を見せない。
そんなリオの方へ伸びてくる銀の腕。あたかも水蛇のように、くねり、くねり、ひねりと奇怪な動きをしつつ迫る幻影の腕!
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