今回のお話はオリジナルのTVシリーズ同様、大きく2つの部分に分かれます。ただし、その分け方には違いがあります。
TVシリーズでは、光の力を受け継いだ人物1人に対して1つのパートが割り当てられていましたが、ここではビースト化してしまう姉の状態で区切ることになります。
これはTVシリーズのラストのように、ビーストの脅威が去っていない状況下でもしウルトラマンの存在が認知されたとしたら、人々の期待に応えようとしたことで死ぬケースはきっと出てくるし、そのとき本人が納得できても身近な家族などは納得できないこともあるに違いないというのが、そもそもの発想だったからです。
前半は姉と弟が互いの秘密を知らぬまま戦った果てに姉が昏睡に陥るまでですが、この部分では自分に起きた変化に気づいていない姉と、最も身近な存在である姉から自分の秘密を隠そうとするがゆえに誰にも自分の正体を明かせなくなる弟の、双方の秘密をめぐるスリルが演出の基調をなすものにしたいところ。個室の壁1枚で隔てられた2人それぞれが抱える秘密。かたや悪夢に彩られた眠りの中、黒々とした影に変貌してゆく姉。かたや姉を気遣うがゆえに兄に死をもたらした光を得たことを誰にも明かせず、重い覚悟をなかなか決められずにいる弟という感じでしょうか。そしてなぜか身近に跳梁を始めるビーストの影。そして影の出現を受けて、弟は父のような存在だった兄の記憶をかき集めつつ、自分はなにができるか、どうあらねばならないのかとの問いに、兄の思いを想像することで答を見い出そうとします。そしてついに、兄が姉と自分に向けていた慈愛のまなざしの記憶をよすがとして、とにかく姉だけはなにがなんでも守らなければならない。兄なら必ずそうしたはずだし、それゆえ光は兄の遺志として自分に託されたのに違いないと考えるに至るのです。
あとはこの2人の姿の他に、この前半で書いておきたいものを列挙しておきます。
まずTV版にも出てきた対ビースト防衛組織ティルトの面々、特に実働部隊であるナイトレイダーにはやはりご登場願いたいところ。実は暗黒巨人だった石堀隊員を除く和倉隊長以下4人のうち孤門と凪の2名までもがかつて光を受け継いだ経験を持つのですから、彼らなら常人では気づかないような手がかりからでも誰が光を受け継いだのかを知ることができるでしょう。そのとき孤門はきっと、思いつめた様子の弟に寄り添おうとするでしょうし、憎しみに呑まれかけた経験を持つ凪は、姉の様子になにかを感じ取ることができるかもしれません。一定の制約があるとはいえ予知能力を持つ吉良沢の扱いはなかなか難しいですが、あまり手に余るようならビースト研究のため北米本部に長期出張してもらうしかないかも(苦笑)
もう一つ、ビーストにまつわる真実が明るみに出たことで、地球はもはやビーストのいなかった地球には戻れないという無力感や絶望に陥る人々の存在にも目を向けておく必要があるでしょう。その中には、もはやビーストの脅威を免れないのならばいっそ邪神のごときビーストを崇め受け入れてしまい、人間であることを捨てる代わりに恐怖を免れ、到来が避けられぬビーストの世界にいち早く適応してしまおうとする者もいるかもしれません。できれば姉が変貌する霊体のごときビーストの姿がその者に恐ろしい考えを植え付け、それが後半の最大の敵になるという感じにできればとも思うのですが……。
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