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2010年07月11日05:21

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シナリオ改造作戦第一号 その10

(10)ベリアルとの戦い その4

「なんという化け物だ……」
「支配するだけでは飽き足らず、なにもかも自分に取り込んでゆく気かっ」

圧倒されたようなメビウスの呻きに、抑えがたい怒りに震えるレイの声が重なる。その頭上から降り注ぐ嘲笑。

「見たか! これぞ力の、支配の本質よ。我こそは宇宙の全てを喰らい、蹂躙するもの。真に頂点に位置するものだ。まずはこの小僧を、セブンの倅を同化してくれよう!」

握る拳に力を込めると、二の腕から激しく噴き出すどす黒い煙。もがき苦しむゼロの姿が再び昏いオーラに呑まれてゆこうとするそのとき。

「ぬぅうっ?」

暗黒巨人の半身がよじれ、巨大な腕が震撼する。不安定にゆらぐ煙とオーラ。

「様子が変だ」
「そういえば、さっきも……」

レオとダイナの声に、はっと顔を上げるマン。

「まさか!」

その目が輝き、渦巻く闇の奥を見通す。レイブラッド星人の姿にからみつくおぼろな影。切れ切れに発せられる思念の声。
「セブン、の息子、に、手を、出、すな……」

「ベリアルが、真のベリアルの意識がレイブラッド星人の支配に抵抗している。ゼロを助け出すチャンスだ!」

マンの叫びを合図にウルトラ戦士たちが一斉に舞い上がり、巨大な拳からゼロを総がかりでもぎ離そうとするが、両腕を振り回す巨獣にあるいは叩き落され、あるいは振り払われてしまう。

「くそ、なんとかしなければ……」

足元からでも攻められないかと視線を落としたレイの目にとまるギガバトルナイザー。はっと気がつく怪獣使いの青年。

「俺もレイオニクス。もしやあれが使えるかも!」

駆け寄ろうとしたそのとき、

「ゼロが呑まれる!」

思わず振り仰ぐレイの上空で、醜悪に膨張する拳の中に埋没してゆくゼロの姿。一瞬挫けそうになる心を奮い立たせ、前へと向き直るレイ。

「……やれるだけやるしかない!」

駆け寄りざまにゴモラとリトラを自分のバトルナイザーへ戻し、それを塔さながらの巨大な棒に押し当て念をこらす地球人のレイオニクス。だがあまりに巨大なギガバトルナイザーはそう簡単に反応しない。気力を振り絞ってさらなる念をこらしつつ、絶叫するレイ。

「百の怪獣たちよ、俺の声を聞けえーっ!」



一瞬遠のいた意識をゼロが取り戻したとき、周囲に広がっていたのは異様な光景だった。

あたりは闇に閉ざされていた。だがその闇は光の欠乏した空間というより、いくらか物質的な、液体とも気体ともつかないもので満たされ、それらが手足にまといつくような、我が身とのけじめがなくなっていくような、いいようのない感触をもたらしているのだった。よくよく見ると、闇一色と思えたものの中に蠢くものが無数にひそんでいる。形をなしては溶け、別の形になろうとしては崩れ、なかなか定まらなかったが、やがてそれらを少しずつ判別できるようになってくる。

それは怪獣たちの顔だった。現れては崩れ、変貌しては溶け、グロテスクな万華鏡のように不断に形を変え続けているのだった。やがて周囲の闇の中から、無数の怪獣たちの首が突き出てくる。さながら巨大で醜悪な生ける壁画のごとく、互いに喰いあいつつも脈動している。

だしぬけに悪寒が背筋を走り、右肩から先がぐにゃりと溶解する。腕だったものが怪獣の首と化して牙を剥き、咆哮する。のけぞるゼロの腕の付け根から胸にかけての体色が一気に変わっていく。そのとき!

「形を見失うな。自我を保て!」

背後から現れた巨人の影が形の変わったゼロの右腕を鷲づかみして叫ぶ。怪獣がひるんだすきにからくも精神を繋ぎ止めるゼロ。本来の形を取り戻すその腕。だがそれは、ともすればおぼろにかすみ、闇の中に溶け込みそうになる。

「ここはレイブラッド星人の精神界だ。油断するとあの怪獣たちのように混沌に呑まれるぞ。やつはそうして混沌の中で自我を失くしたものを支配するんだ。そうなったら最後、よほどのことがないと意識を取り戻すことはできん」
「……あんたは、まさか」
「そうだ。俺がべリアル、この体の本当の持ち主だ。レイブラッドめがセブンを、おまえの父を倒した衝撃で、ようやくここまで自分を取り戻すことができた……」
「親父を倒した衝撃?」
「セブンは俺の部下だった。こんな俺を師と仰ぎ尊敬してくれていたんだ。だから俺はなにがなんでもおまえを帰さねばならん。いくぞ! 長居は危険だ」

走り出す二人を阻む混沌の怪物たち。それを圧倒的な強さで撃破していくベリアル。そのたびにゆらぎが収まり、ウルトラ戦士の姿を取り戻してゆく。驚くゼロ。

(凄い! これほどの使い手だったなんて)

そのとき響くレイブラッド星人の声。

「この期に及び我に抵抗してなにになる? 無駄なことはよせ。我が闇こそ汝の終焉の地」
「ふざけるな! 俺にはやらねばならんことがある。その最初がきさまの野望を砕くことだ。俺の体から叩き出してやる!」

その言葉に嘲笑を返す星人の声。

「いまさら重ねた罪が許されると思うか」
「……許されるなどとは思わん。それでも俺は、できる限りの償いをしなければならんのだ。そのためにもこいつには、きさまの指一本触れさせはせん!」
「ならばこれでもそういえるか?」

その声とともに、周囲の闇の壁から一気に実体化する混沌の怪物たちの大群。これまでのものの数倍の大きさを持ち、目紛るしく姿を流動させている。そして怪物たちの背後からさらに大きな姿で立ちふさがるレイブラッド星人の号令。

「喰らい尽くせ!」

咆哮を上げ押し寄せてくる混沌の怪物の群れ。振り返るベリアルに強い視線を返すゼロ。頷いたベリアルが叫ぶ。

「いくぞ!」

正面から濁流のような群れに突っ込み、背中を預けあって激闘を繰り広げる2人のウルトラ戦士。その超絶の力にたちまち倒され黒煙と化す混沌の怪物たち。だがそのたびに、より大きな怪物を混沌から引き出すレイブラッド星人。消耗戦の様相に焦りを隠せぬ2人を嘲る星人の声。

「汝らも所詮そこまでか。さあ存分に料理してくれるわ!」



レイのこらす念に次第に反応し、ゲージが輝き始めるギガバトルナイザー。レイがここぞと力を振り絞ると、ついにゲージが振り切れる。とたんに黒煙となって逆流する混沌の波動が一気にレイを呑み込む。絶叫を上げ再び変身するレイ。それに気づいたメビウス。

「レイさん、無茶だ!」

やめさせようと飛来しレイに手を伸ばすメビウス。回り込みメビウスを遮るスペースペンドラゴン。

「手を出すな。これはレイの戦いだ!」
「でも、これではレイさんまで呑まれてしまう」
「俺たちはレイを信じる!」

交わし合う視線。手を引いて立ち上がるメビウス。

「……わかりました。では我々も自分の戦いに!」
「いくぞ、あの化け物からレイを守るんだ!」

一気に飛び上がり再び巨獣に挑むメビウス。その後ろから巨獣の顔面にミサイルの弾幕を浴びせるレイの仲間たち。怒り狂い剛腕を振り回しつつメビウスたちを追い、レイの居場所に背を向ける巨獣。その瞬間、混沌の波動を押し返して叫ぶレイ。

「百の怪獣たちよ、支配を断ち切れ。自分の姿に戻るんだ!」


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