(5)導入としてのオープニング
まずオープニング。元の映画ではベムラーとウルトラマンメビウスの戦いで始まりますが、無人の惑星を舞台にメビウスが逃亡してきた怪獣ベムラーを追い詰めて撃破するだけなので、派手ではあるもののまるで含みがありません。それにベムラーが悪事をなす場面がないので、単に怪獣であるがゆえに殺されたように見えるのも気になります。なによりこのシークエンスには、本編の物語につながってゆく伏線がほとんどありません。
ここではこのオープニングを、まだウルトラ戦士だったベリアルの戦いのシーンに入れ替えつつ、少々意味付けしてみることにします。
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都市の瓦礫を蹴散らしながら、怪獣の大群と戦う満身創痍のベリアル。ものすごいスピードでみるみる敵を撃破していくものの、その戦いぶりは自分や周囲に被害が及ぶことをまるで意に介さない、自暴自棄にも似た様子のものである。
最後の相手を刺し違えるように倒したものの、がくりと膝をつくベリアル。灰燼と化したあたりの風景に「またか」と呻くようにつぶやき、そのまま倒れ伏す。そこへマンとセブンが飛来。あたりの惨状に絶句しつつもベリアルを助け上げると、再び空の彼方へ飛び去ってゆく。
暗転の中に響くマンとセブンの声。
「なぜ増援を待たずに仕掛けたんですか!」
「あなたはそんな人ではなかったはずだ!」
「青二才が俺に意見するか!」
脅かすように立ち上がるベリアルに一歩も引かない構えのマンとセブン。一瞬触発の両者の間に割って入るウルトラの父。
「ベリアル! おまえに謹慎を命じる」
「俺に勝てたためしもない分際でなにをいう」
「キングのご裁定だ。これ以上逆らえばウルトラ戦士の資格剥奪だぞ!」
沈黙し、踵を返すベリアル。見送りながらつぶやく3人。
「なんというすさみようだ……」
「初めて任務に失敗してから、あの人は変わってしまった」
「ベリアル、何があった。なぜ話さない……」
カメラがプラズマタワーを下から上へ移動。鳴り響く警報音。
「やめろ!」
立ちはだかる番人を至近距離からの光弾で打ち倒すベリアル。プラズマの光を覆いかぶさるようにして取り込もうとするが、全身の傷口から煙を吹き上げて苦悶するところへかけつけるウルトラの父たち。番人を助け起こすマン。呆然とつぶやくセブン。
「なんということを……」
拳を固め一瞬目を伏せたウルトラの父の、絞り出すような声。
「ベリアル。もはやおまえの罪は許されない。掟に従い光の国から追放する!」
ウルトラの父の手から発せられたビームは苦悶のあまり抵抗できないベリアルを縛り上げ、その手の一振りで宇宙の彼方へと放逐する。カメラが上空へ移動するに連れて荘重なオープニングテーマ。
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こんな感じでしょうか。
ここではベリアルが光に手を出した理由を、ゼロのような若さゆえの未熟からあえて遠ざけてみました。どうやら彼はウルトラの父と同世代であるらしく、力ではむしろ上回るらしいのですが、そんな彼でさえ力への妄執に捕らわれうる。しかもそこには明らかにされていない何らかの理由もありそうという、そんなものにしてみました。ベリアルが壊滅した周囲を見て呻くシーンはこれに対応する場面をラスト近くに出すための予告というか、回想を呼び出す一種のトリガーです。2時間程度の劇場用映画の場合、こういう交響曲などに多用される手法が機能することも期待できそうですので。
次回はやはり対になるべき2つのシークエンス、ベリアルがレイブラッド星人に憑依される場面と、レイが手下になれと迫るベリアル(=レイブラッド星人)を退ける場面を検討してみます。
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