1969年の夏、世界中が熱狂したアポロ計画による月面着陸には、ナチスの頭脳が関与していたというドキュメンタリーです。イギリスでは2025年6月14日に放送したらしい。ヴェルナー・フォン・ブラウン博士は、アメリカの宇宙計画の中心人物として名高いのですが、第二次大戦中はV2号という大陸間弾道弾などの開発者だったわけです。
僕の知識には、アメリカはフォン・ブラウン博士たち“ナチの頭脳”を自国に集め、ロシアは“ナチの頭脳”たちの文献などを持ち帰り、独自にロケット開発して人工衛星打ち上げなどでアメリカに先んじたという“史実”しかありません。フォン・ブラウンがナチス信奉者であり、強制収容所などに関与していたという部分は無視していました。
それはウォルト・ディズニーが自身のテレビ番組などで、フォン・ブラウン博士をアメリカに帰化したドイツ人として、宇宙競争のアメリカのエースと紹介したことなどが大きく影響しています。しかし当時から、フォン・ブラウン博士たちの“ナチス信奉”は問題視されていたらしい。それは当然でしょう。
ソビエトの世界初の有人宇宙飛行が成功を収めた後、ケネディ大統領は“アメリカは月面着陸を10年以内に実現する”と演説して、実際に1969年に実現したわけです。マーキュリー計画から月面着陸までの“アメリカの苦闘”は、それこそ数々の映画や書物でお馴染みでしょう。いまさら英雄に、ホロコーストの下手人というレッテル貼りは無理でしょう。
そうは言っても、自国の利益のためになら第二次世界大戦における“民主主義と全体主義の闘い”というスローガンを覆い隠してもいいのか?という意見も当然出ていいと思う。それはもちろん“死者を鞭打つ”ことではなく、政治(そしてその裏付けとなる経済)の本質が、“不正義”となって歴史に残るのだということです。
だからといって僕は、正義が無意味だとは思いません。やはり物事はすべからく、正義という大義に沿って考察されるべきだと思います。ウォルト・ディズニーという“愛国者”は、それを知りつつフォン・ブラウン博士の英雄化に手を貸した。つまり“愛国心”という概念は、正義をも歪めるのだという事実を、我々は再度確認するべきなのです。
この番組は元々46分のテレビ番組なので、NHK−BSの「世界のドキュメンタリー」枠でノーカット放送したことになります。もっとも日本語版制作において、フォン・ブラウン博士に対する“配慮”があったかなかったかまでは、僕にはわかりません。
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