オールシネマ・オンラインから物語をコピペします。
>借金取りに追われ、2人の子どもを抱えて東京へ逃れてきたシングルマザーの夏希。苦しい日々が続いていたある日、ふとした偶然が重なり、ドラッグの売人になることを決意する。そんな彼女の前に、孤独な格闘家の多摩恵が現れ、夜の街のルールを何も知らない彼女のためにボディガード役を買って出る。
シングルマザーの永島夏希を演じるのが北川景子、そしてボディガード役を買って出る芳井多摩恵を森田望智が演じています。2人の子供のうち姉が、バイオリンの演奏に才能を見せる、という展開も付いてます。昔の少女漫画は、貧乏な家に生まれた女の子がバレリーナとして成功する話が多かったな。その類のエピソードがいろいろ出てきます。
一方で、お金持ちのお嬢さんが“悪い学友たちのせいで”薬に手を出してしまうとか、その父親が娘の教育についてはすべて母親に任せているとか、三流少女漫画で使い古されたパターンが、21世紀も1/4過ぎた今ごろ復権するとは、僕にはとても信じられない内容でした。せめてジェローム・アンリコ監督の「ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋」(2012)ぐらい勉強しておけと思う。
つまり、この映画に登場する人間に常識的な倫理観は通じません。ヤクの売人が殴り倒されているのを発見したシングルマザーは、その懐中からヤクを盗んで夜の街角で売りさばくのです。まだ賞味期限切れで廃棄処分される餃子弁当を息子たちに食べさせるほうがマシですわ。せめて「誰も知らない」(2004)くらいは勉強してから作ってほしいな。
あるいは「グッド・ライ 〜いちばん優しい嘘〜」(2004)をきちんと見ていれば、こんな三流漫画以下のプロットで脚本を作るはずがないと僕は思う。このごろの映画会社というもの(この映画の配給は松竹)は、自分たちが作っている映画の出来上がりというものを、きちんと確認して配給してるんでしょうかね。
ま、すべて僕が“内田なんたら”という監督さんが、かつて面白い映画を作っていたけど最近聞かないなと思い、同姓のこの監督の作品が日本映画専門チャンネルで放送されたから録画してみただけのことです。あっちは“内田けんじ”で、こっちは“内田英治”。早合点した僕の責任です。
とはいえこの内田さんは、この程度の人間造形で脚本でございといい、この程度の発想で薬物犯罪の売人たちを描いて原案でございといい、こんな手酷い内容のドラマを見せておいて監督でございとおっしゃるおつもりのようです。そしてまた、こんな映画に2時間4分という大作並みの完成尺を与え、大々的に公開して商売にする会社もあるようで。
この映画の中に出てくる“バイオリンを演奏するなら、子供の頃から基礎をきちんと学んでなくちゃダメ”だなどと、僕は言いません。そんな勉強と訓練のヒエラルキーが、多くの才能をダメにしてきたであろうことは想像に難くない。しかし音大出の先生の硬直したレッスンシステムを非難するつもりもなく、少なくとも心地よい音楽を楽しませてほしかったと思うだけです。
しかし、すべてがしょーもない理屈で割り切ったような“社会学視点”でエピソードを並べ直され、そこにエクスタシーという合成麻薬の固有名詞を放り込むだけで“社会”を描いた気になっているような、自己満足しかないホームドラマなんか、僕にはまったく不要なのです。井樫彩監督の「愛されなくても別に」の圧倒的な説得力を、僕は買います。
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