NHK-BS「世界のドキュメンタリー」では、すでに今年の1月13日に放送していたようです。その時の題名は「名もなき反逆者 ロシア 愛国教育の現場で」で、前編「追い込まれる教員たち」と後編「“軍事化”する学校」の前後編に分かれていました。←僕は最近の再放送を見たしだい。本来の作品の上映時間が90分なので、前後編でノーカットだと思う。
ロシアのカラバシュという町は初耳でした。なんでもウラル山脈に近く、銅の産出地として名高いそうです。そして銅の精錬作業がもたらす公害でも有名とか。そのカラバシュの学校で授業風景を映像で記録する仕事をしている先生が、プーチンの教育方針変更で“愛国教育”を強いられ、やがて西側へ亡命してしまうという展開でした。
製作したのは“メイド・イン・コペンハーゲン”と“ピンク・プロダクション”とクレジットされています。オールシネマ・オンラインではデンマークとチェコの合作としていますね。imdbによるとイギリスのBBCとドイツのZDFもかんでいるらしい。途中で“どこの撮影隊だ?”という問いに、“イギリスの番組”と答えて見逃されるシーンがありました。
自分が卒業した学校で、授業を記録映像に残すという仕事をしていたパシャは、ウクライナ侵攻に反対だし、その上卒業生たちが徴兵されて戦場に向かうとなって辞職を決意します。そして卒業式を終えてすぐ西側へ“旅行”に出かけ、帰りの切符は使わずに亡命したらしい。同じ学校の図書室に勤めている母親も、何も言わずに送り出します。
その一部始終を淡々と見せていきます。しかしプーチンの独裁政権って、学校の授業風景まで提出させて締め付けているんですね。自分で憲法を変えて、2036年まで再選できるようにしたらしい。そんな“大国”が、無茶苦茶な理屈で他国の首脳を暗殺してしまうトランプ大統領のアメリカと対立しているなんて、戦後民主主義を学んだ僕には信じられない。
ということで、パシャ君が無事に亡命したらしいことは、まずめでたいのですが、それだけで話は終わりませんよね。そもそも“愛国心”を鼓舞するという状況が、第二次大戦時の日本を思い返しても明らかなように、“誰かに替わって戦場で命を落としてこい”という意図でしかない。命を投げ出したくない支配者たちの独善なのは明確です。
とはいうものの、戦争状態に突入したら、この程度の理屈では対抗できない。まだパシャは亡命できただけ幸せでした。教え子のひとりは志願して戦場に赴き命を落としています。その家族たちも、理不尽な死だと思ってはいても悲しむ以外に術はない。庶民レベルから見ると、政治というものはいつも非情で身勝手なのでした。
それにしてもアメリカ映画界も、こういう作品にアカデミー賞を与えるのですね。その“リベラルさ”がきちんとした力となって政治を動かせばともかく、まだまだ“夜明け”は遠いと実感してしまう昨今です。せいぜい僕は、加川良の“教訓�機匹任盡�ずさむしかありません。逃げましょう、隠れましょう。
写真3は、サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞したときの監督たちです。パシャはどうしてる? 元気ですか?
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