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2014年01月13日20:39

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凡録盤を聴く その3:なぜSCーPM02なのか

 前回は高音質を謳って登場したはずの新たなフォーマットが、普及期に入ると底辺の再生装置の性能や特性を無視できなくなるがゆえに、あえて凡庸な録音たらざるをえなくなるメカニズムについて述べさせていただきました。その現象はCDやSACDにおいても繰り返されたわけですが、振動対策という重荷を背負うステレオLP期の盤において最も顕著であったため、演奏面では黄金期だったこの時期の録音において最も重い症状を呈するものだったこともおわかりいただけたことと思います。そしてアナログ末期にクラシックなどのアコースティック楽器に不向きな音がよい音の基準になったことまでが重なった状態でCD時代に突入した結果、音源の音の悪さが一気に表面化したのでした。つまり普及品のアナログの低性能という前提条件が崩れたとき、それを補うべく施されたあらゆる対策がすべて裏目に出ることになったのです。
 この乖離はあまりにも大きく、僕も長年なんとか1つの装置で埋めることができればと試行錯誤を繰り返してきたわけですが、とうとうそれを諦めてサブシステムを完全に専用にまわしたのが昨年のことで、それでようやく得心のいく再生音を引き出せるに至ったのでした。その経験から凡録盤再生機に求められる条件も見えてきて、その条件を最も安価に実現するにはどんなシステムになるだろうかとミニコンポやマイクロコンポを見て回った結果辿りついたのが、パナソニックの最低価格機種SCーPM02を2組買って付属スピーカーを2組にして使うという方法だったのです(ちなみに余ったセンターメカは故障時の予備として保存に回します)

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 ではこのマイクロコンポのどこがそれほど優秀なのか、以下に列挙してみます。

1:明るすぎる音色をキャンセルする能力の高いスピーカー
2:スピーカー2組の同時使用で高域の張出しを抑え込める
3:小型でセッティングも容易なため、様々な環境で使える
4:ダイナミックレンジの狭い盤に一種の迫力を感じやすい
5:このクラスには珍しい豊富な音質調節機能を持つ
6:大音量で聴く装置ではないので近所迷惑になりにくい
7:安価な現行製品なので、誰でも実際に使うことができる

1:明るすぎる音色をキャンセルする能力の高いスピーカー
 付属スピーカーのユニットは10センチ口径のフルレンジで、ネットがはずれないので素性は定かでありませんが、安価な品であるのは確実ながら、ここでの目的に実にぴったりの暗い音色を持っています。2000年以前にはこの口径でこんな音色を持つスピーカーにはまずお目にかかれませんでしたが、ケンウッドのこれも最低価格帯のマイクロコンポM−313の付属スピーカーが箱の構造が異なる(ただし内容積は同等)ものの、やはり10センチフルレンジで非常によく似た音色なので、同じユニットを使っているのかもしれません。
 とにかくDGやEMI、ナクソス等のマスタリングに由来するとおぼしき金属的な音色を落とすことにかけては抜群のもので、このスピーカーがなければこのモデルを選ぶことはできなかったでしょう。細かくいえばブラウン系というよりは少し黒みの強い傾向なので弦楽器よりむしろピアノにやや向いた鳴り方ですが、それもシンセサイザー的な不自然な艶をここまで落としてくれることを思えば全く問題にはなりません。

2:スピーカー2組の同時使用で高域の張出しを抑え込める
 ユニットの音色は高域のやや高い周波数帯域に作用していて、高弦の張出し感を左右するもう少し下の周波数にはあまり効いていません。そのためもう1組のスピーカーを背中合わせに置いて中域から低域を増強してやるとヴァイオリンからコントラバスに至る弦群の力関係が整ってアンサンブルとして感じられるようになります。このことは上記の音色の補正とあいまって、弦楽器の明暗の表情の描写力を格段にアップさせてくれます。

3:小型でセッティングも容易なため、様々な環境で使える
 スピーカーも本体も非常に小さくて軽いので、普段はどこかに片づけておいて様々な場所に持ち出して使えますし、それも音に影響します。たとえば大型装置を置けない畳の上で腹這いになって聴いてもユニットが小さいのでブーミーになりすぎず、むしろローカットの著しい盤には好適な特性が得られます。また食堂のような場所では後ろ向きに置いた1組の上にもう1組を前向きに積み上げると、多少広い場所でも1組を台に乗せた場合のように貧相にならず低音と反射音を伴う響きが楽しめます(パーティのBGMなどに適した使い方になります)容易に動かせないメインシステムにはできない使い方で様々な響きを得られると同時に、それらの体験を通じて音の変化について体で覚えることができ、ひいてはメインシステムの使いこなしにも役立ちます。

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4:ダイナミックレンジの狭い盤に一種の迫力を感じやすい
 アナログ時代には針跳び対策として、近年では装置の小型化に伴って、昔も今も強弱の幅が圧縮された録音は枚挙にいとまがありません。それらを大型装置で聴くと当然スケールは大きいのですが、装置の能力のわずかしか使っていないことに基づく迫力のなさが演奏まで消極的なものであるような印象に繋がってしまうことがあります。小型装置を使うとそういう物足りなさが緩和され、大型装置よりも生き生きした演奏のように感じられる傾向があります。

5:このクラスには珍しい豊富な音質調節機能を持つ
 最低価格帯のマイクロコンポではラジカセなどと同様オンオフのみのバスブーストや、せいぜいロック、ポップス、クラシックなどのジャンル名を冠した固定カーブのイコライザーくらいしか持っていないケースがほとんどですが、これにはそれらに加えて高音・低音独立式の5段階の増減ができるトーンコントロールがついていて、カーブの特性も付属スピーカーでちゃんと効き目が感じられるものになっています。その上簡易サラウンド機能までついているので、極端にデッドな盤を耳当たりよく鳴らすこともできるなど、凡録盤を聴く上でありがたい機能が満載です。

6:大音量で聴く装置ではないので近所迷惑になりにくい
 もちろんヘッドフォンやイヤホンのように完全に音漏れしないものではありませんが、それらにはここまで中域周辺が特殊な特性になっているものがないので、本格的にイコライジングできる手段がないとこれらの盤には対応が困難です。スピーカーが音を遠くへ飛ばす力は振動板の面積に比例し、近くで聴感上同じ音量でも小さなスピーカーの音は遠ざかるとより急速に減衰します。逆にいえばここでの用途ならせいぜい1メートル以内の至近距離で聴かないと、所定の効果を発揮しないので注意を要します。

7:安価な現行製品なので、誰でも実際に使うことができる
 音盤に関する様々な記事や文章に接してもどかしいのは、同じ装置ではないので同じ音で聴きようがないという追体験の難しさです。これは2組買っても4万円しないという最低価格帯の現行機種ですから、その気とそれだけの予算があれば誰でも僕と同じ条件で聴くことができます。

 あまりにも小さくて軽い、オーディオファンたる者からすればオモチャでしかないこのマイクロコンポ。でも凡録盤がそもそもオーディオファンたりえない人々の装置を想定して生み出されたものであった以上、それらの再生装置として適しているのは当然ともいうべきなのでしょう。今後はこのコンポで聞くのに適した盤についても、折々に書いていきたいと思います。

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