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2012年12月03日06:04

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リレー企画・続報の13

綾華☆☆様のコミュニティ「ZERO Another BALLAD」の設立1周年記念リレーに更新がありましたのでお知らせいたします。


http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=71247131&comm_id=5150160&page=all

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<EXリレーエピソード 『史上最低の侵略』>

take-14

SEPTEMBER 18TH PM 21:00

「お前達の働きで食事代と賃金を両方払ったんでは引き合わん。メシか金かどちらかを諦めてもらう。わかったらとっとと帰れ。今夜はもう我々の夜食すらないのだ!」

 兄のオスカーが叫ぶ横で、控えていた弟のドリアンがタブレットに指を滑らせてエレベーターを呼び寄せるや、5人を押し込むようにして地上へと送り返す。


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SEPTEMBER 18TH PM 23:30

「それでは私とソラは仮眠します。ヒトミは2時まで。サヤ、レオン、頼みましたよ」
 ソラと倉澤チーフがエレベーターへ消えた瞬間、サヤは安堵のため息をつく。

 警戒レベルが最低ランクだからでは無論ない。つい数時間前に目撃したできごとを目の前にいるソラに絶対知られてはならないと意識するあまり、全く気が休まらなかったのだ。レオンがいま開発中の手持ち武器について延々と語ってくれたおかげで余計な話をせずにすんだものの、オッドアイの青年に視線を向けられるたびに、心を見抜かれたように感じてギクリとしたことも一度や二度ではなかった。

「はい、サヤりん、レオンりん、お茶だよ」
 ヒトミが煎れてくれた暖かい紅茶を一口したそのとき、サヤは大事なことを忘れていた自分の迂闊さに気づいた。ユカリに今日『ネージュ・ルネ・フルール』で見た光景を、絶対にソラに教えるなと口止めしていなかったのだ。最近やっと声楽の勉強に本腰を入れるようになったユカリは、ソラからドイツ語の発声を習っているため親しい。テラとリーダーのデートという絶好のネタを黙っているはずがない!

 すぐに電話をしなければ。だが、ここでそんな話はできない。そもそも私用電話は生活棟の公衆電話からという決まりだ。立ち上がりかけたサヤの耳に、訝るような声が聞こえた。

「サヤりん、どこか行くの? 夜中だよ?」

 うろたえた視線がヒトミの不審げなまなざしとまともに向き合った。レオンもブラスターシュートの手入れの手を休め、自分を見ている。
 そもそも寮の消灯は夜10時半だ。もうユカリは寝ている。今電話しても起こしてしまうだけだ。それに苦手な数学の課題のプリントをせねばならないともいっていたから、ソラに話す余裕はまずないだろう。

……明日、連絡すればいいか。

 サヤは二人に微笑んでみせると、座り直してファッション誌を開いた。タカフミも今日は非番で何よりと思いながら、長すぎた緊張の反動としての安堵感に浸りつつ、この秋冬のブーツ特集のチェックに入った。自分の読みの思い掛けぬ穴にも気づくことのできぬまま。


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SEPTEMBER 19TH AM 00:20

 大浴場で汗を流して仮眠を取ろうとしたソラは、デスクでチカチカと点滅する小さなライトに気づいた。どうやらメールが届いたようだ。
 アリーナの中では個人の携帯電話やメールアドレスの利用は許されず、いったん情報部がチェックする決まりになっている。
 ソラは休む前に、メールをチェックすることにした。

 届いたメールは3通。ウミからの定時連絡に、テラからのおやすみなさいメール。

 そして、ユカリからも来ていた。


「ウミ……ありがとう」
 恋人のウミからのメールに、ソラは微笑む。
 次のデートが楽しみだとあった。


「……テラ、あれ? 今日、外食したのか」
 テラからのメールには、今日美人の英語の先生のストッキングが伝線していたこと。
 そして今夜は外食して、お肉もアイスクリームも美味しかったこと。
 そしていつも通り、兄さん、おやすみなさい。

“テラ、何食ったんだろうな”
“フミタケ君とバイキング料理にでも行ったんだろう。
 しかし、フミタケ君、自力進学なのに余裕あるな。まあアカデミーゼミナール全国模試でベスト5だったら当然か……”

 話しかけてきたゼロに応えながら、最後のメールに目を移すソラ。ユカリからのメールには、宿題の数学の問題がどうしても分からないからヒント教えて。とあった。数学が苦手なユカリは、何度かこうして宿題ヘルプメールを送ってきている。

 ソラが問題の解き方のヒントを返信しようとしたら、まだ続きがあった。来週のドイツ語レッスンの確認に続き、大スクープと書いている。ハートや感嘆符の絵文字で画面がびっしりだ。

「来週のレッスンは、予定通りでオッケー。
 でね。ソラぽん。今日お姉ちゃんと、ソラぽんが教えてくれたフレンチビストロ行ってきたよ。歌ったらけっこう拍手もらってデザートランクアップのチェリー・ジュビレがもう最高!
 おまけに後ろの席では、テラぽんとツクヨぽんがラブラブデート。幸せオーラいっぱい浴びちゃった……」

 メールを読んでいたソラは、その場に固まってしまった。様子がおかしいと感づいたのか、ゼロが声をかけてくる。

“おいソラ、どーしたんだ? ユカリの宿題、さっさと片づけて寝るんじゃねえのか?”

 しかしソラは答えるどころか、次の瞬間ひっくり返ってしまった。わけがわからず当惑するゼロの声すら遠のいてゆく。

“おいおい、床なんかに寝てんじゃねえっ。いくら眠いったってせめてベッドで……”


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SEPTEMBER 19TH AM 00:30

 夢野シティ一の老舗にして高級ホテル、セントラルシティホテルユメノのスイートルーム。

 マッサージサービスを受けていた真柴リーダーは、スタッフがドアから出ていくや宮島からの荷物をいそいそと開いた。

「きゃっ! おばあちゃまありがとう。ホントにかわいいわ」

 出て来たのは、手作りのあたたかさが伝わる、かわいらしい人形だ。
 その人形のモデルは、本人を知っているならわかる。

「テラちゃん、おやすみなさい」

 赤毛の人形にキスをして「ツクヨさん」は明かりを消す。鋼のワルキューレたるその顔に、サヤが見れば絶句するような天使の笑顔を浮かべつつ。



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