mixiユーザー(id:7656020)

2007年04月27日05:01

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クラシックは長いから聴きやすい

 クラシック音楽が長いから聴きにくいという人は多いと思いますが、長い曲を書く作曲家もそこは心得ていて工夫をしてくれています。それがどんなものか少し考えてみましょう。
 まず自分が才能のある作曲家だと考えてみてください。そして何か長い曲を作ることになったとします。大きなキャンバスを与えられた画家みたいなものですね。さて、この長さをどう埋めていけばいいのでしょう。美しいメロディーや豊かな楽想はいくらでも湧き出てきます。
 画家がキャンバスを極彩色で埋めつくすみたいにどんどん楽想やメロディーを注ぎ込んでいけばいいだろうって? なるほど。ではそうやって書いてみましょう。
 できあがったものはたぶんメドレーみたいなものになっていると思います。次々と新しいメロディーや楽想があふれ出て絶えず変化し続ける音楽になっているはずです。絢爛豪華のきわみだと思います。
 ここで作曲家であることをやめて聴き手に戻ってください。そして誰かが書いたメドレーを聴いたとします。それは絢爛豪華で変化に富んだ、けれども知らないメロディーばかり出てくるものです……。
 何がまずいかはおわかりですね。メドレーというものは聴き手が知っている曲を繋ぎあわせた場合しか楽しめないものです。知らないメロディーばかりだと聴き手は応対にただ追われるだけで10曲目を聴いているときには3曲目に何を聴いたかなど忘れ果てています。つまり聴き手を音楽の流れの中で迷子にさせないようにしたければ、無制限に楽想やメロディーを投入するわけにはいかないのです。絵画のようにひとめで全体を見渡せるものとは異なり、時間の流れの推移で形作られる音楽では長い曲ほど使える楽想やメロディーの数に制限が出てくるというパラドックスがあります。
 ではどうすればいいのかはもうおわかりですね。少ない数の楽想やメロディーを変化させながら繰り返す。選択枝はこれしかありません。クラシックに限らずプログレと呼ばれる1部のロックなど長い音楽を構成する方法はおのずとこうなります。何度も出てくる素材が自然と記憶に残り、記憶に残るからこそ変化を変化と感じることができて表現として受けとめることができる。優れた曲ほどそういうふうに作られていますから、記憶に残る素材がどう変化するかにちょっと注意を払ってさえいれば長いからこそわかりやすいとさえいえるほどです。長さを恐れるにはおよびません。
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