NHKの朝の連続TV小説は見ていて疲れる「おかえりモネ」が終わり、「カムカムエヴリバディ」が好発進した。歴代3人のヒロインが主役らしいが一番手の上白石萌音の演じる安子が淡い憧れから恋に落ちたところ。当時の時代背景の中では当たり前の障壁が立ちはだかる。見合いをせざるを得なくなり彼と最後の時を過ごそうと大阪に行き、何も告げずに楽しそうに過ごしひとり列車で岡山に帰ってくる。むろんその間泣いている。このあたりはいじらしくて、じいさまの私などは「これで終わりなのか…あの時代だからなぁ」などと早くも諦めかけているが、岡山に着くと彼女の様子がおかしいので追いかけてきた恋人が登場し、彼女の家に乗り込む。おお、やるじゃないか、若者よ、と気を取り直すじいさま。だが安子は婿をとらねばならぬ身、と今度は和菓子屋の事情から父が立ちはだかる。少し前にサッチモの歌う「On the sunny side of the street」を喫茶店で二人で聴くシーンがあり（これだけで私は泣きたくなる）、それと対照的な状況が展開されていく（これじゃあI used to walk in the shadeではないか ）。どこにあるの、陽の当たるサイドって？
パターンと言われたらそうかもしれないと思うが、登場人物たちと一緒になって心が揺れるドラマというのは楽しい。テンポもいいし、どきっとしたり泣きたくなったりしながらの毎日だ。わけの分からぬ小理屈や「新しさ」を主張して退屈なものより、単純さのなかに芸がひかるドラマを観ていたい。ヒロインは可愛いし役にぴったりの幼さと純真さがまぶしい（可愛いかどうかは好みにもよるので我が家では私は孤立している）。というわけで少なくとも三分の一はしっかり観たい。
ところでドラマ絡みでもうひとつ。大河ドラマの「青天を衝け」は途中からとても面白くなってきた。「国宝級のイケメン」＝吉沢亮は朝ドラ「なつぞら」の天陽くんの時のほうがよかったんじゃないの？みたいに思っていたが、大人になるにつれカッコよくなってきた。徳川幕府から明治政府への転換をこういう角度から描いたものが少ないせいか、新鮮である。それと、いつも草��剛の演技には感心するが今回の徳川慶喜役もすばらしく、とりわけ大政奉還後の口数の少ない場面で登場するたびに幕府時代と明治新政府の位置関係を象徴するような表情が印象的である。なりたくてなったのではない江戸幕府最後の将軍が自ら政権を明け渡し敗残の余生をどのような気持ちで生きたのか、今まで考えたこともない世界が広がっていた。まだ登場するらしいので楽しみだ。以前の「西郷どん」では当然といえば当然だが西南戦争が時間をかけ劇的に描かれたが、今回、西郷の死は数秒の報告で終わった。こういうのが主人公が変わると歴史の景色が全く変わる大河の面白いところだ。ちなみに娘の教え子が出ているというので、どこどこと楽しみにしていたが、先日冨岡製糸場に工女として入る尾高淳中の娘、尾高ゆう役で出ていた。畑芽育（はた・めい）。中学か高校に入ったくらいの可愛いお嬢さんである。
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