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2020年02月03日14:11

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松下・佐々木現代詩文庫刊行記念会

昨日は松下育男さんと佐々木安美さんの現代詩文庫刊行のお祝い会に行った(横浜の石川町駅下車の中華料理店「味臨軒」)。昼間はbuoyの会で、ゲストに佐々木安美・井坂洋子・高橋千尋さんら(ということは詩誌『一個』全員)をよんで座談会があった。そのあと20人くらいの生徒さんたちの詩の合評のあと、その二次会に合流する形だった。教室は満ぱいと聞いており、生徒さんたちの椅子を奪いたくないので私は遠慮していたが、八木幹夫、中本道代、中島悦子さんたちはちゃんと昼から入れたらしい。遠慮したのは失敗だった。夜の会場に先に着いて柿沼徹さん、久谷雉さん、藤井一乃さん(このお祝い会は松下・佐々木とともに文庫を製作した藤井さんの三人が主役である)などで教室組が来るのを待っていた。教室から抜け出てきた廿楽順治さんが例によって何くれとなく世話をやいてくれていた。

セレモニーは八木さんの乾杯だけで、あとは自己紹介ということで全員が話した。それぞれ面白かったが、若い頃の佐々木安美の詩を初めて熟読したという人が多く、私もそうだったが、読むとこんなにすごい詩人だったのかと驚かされたという感想が多かった。なかに「京浜東北線いっぽんで来た」とか詩と関係ないことを話している爺様がいたので、あの人、生徒さん?と松下さんに聞くと八木・松下両氏が同時に答えた、「細田傳造!」。あのすっとぼけ方は、詩と同じだ。このように手紙のやりとりはしていても初顔合わせの人もたまにいる。

驚いたことに40年以上前に私たちがやっていた同人誌『グッドバイ』を読んでいるという若い男性がいた。どこで入手したのか訊くと国会図書館で全部読んだという。創刊号はどこかから入手したそうだ。私や松下さんは間もなく同人を退会したが、彼によると最終号には元同人全員が書いているという。記憶がない。どのように同人を作ったのかという話を聞かれ、当時の話をしたあと、上手さんの最近の詩集が買えない。どうすれば入手できるのかと訊かれた。私は詩の会に行くときには必ず新品を一冊持っていく。それを差し上げた。二冊以上持ち歩くことはない。私の詩集はビラでもないし名刺でもない。心から読みたい方との出会いがあれば一冊だけ手渡すことができるというのがよいと思うのだ。

脱線して詩集は売るものか、あげるものかについて。私はオリジナル詩集は全部自費出版なので、人にあげるものだという感覚が強い。お金を出してでも買おうとしている人が目の前に現れたら自分は本屋にはなれず、その本の著者として差し上げることになる。価格も印刷されているし、ちゃんと価値に見合った売り買いをすべきだとの意見(関西の方に多いようだ)もその通りだと思うが、「東京人の<ええかっこしい>」(けっこう本質を衝かれているかも)というのはお江戸から続く感覚なので仕方ないのである。三好賞の贈呈式のパーティでは詩集販売コーナーができた。二冊受賞で、もう一人の方の詩集は、詩の世界では名の通った書肆山田から出たものだった。その書店の販売員も来られていた。で、私の版元の版木舎も出してくれとなった。私は見本を一冊置いて購入希望者には郵送するので住所を書いてくれという方式にした。お金を出してでも読みたいという人には差し上げようと思っていたが、それでは書肆山田さんの営業妨害になるので避けたかったのと、大阪まで往復3万円もかけて来てくれた友人の誰かに私の本の売り子を頼むことなどできなかったからだ。申し込んでくれた方は十人に満たなかったが、後日全員に贈呈した。喜んでいただき、ほぼ全員からていねいな感想が届いた。うれしい感想は創造者への最高の贈り物である。あの場で購入しただけだったら感想はいただけなかっただろう。それで思い出した。その日「物々交換」してくれないかと若い女性が詩集をくれ、その方にも詩集を送り感想のやりとりをしたが、その人が昨年の「詩と思想」新人賞を受賞された黒田ナオさんであった。もちろん、購入して読む楽しさもある。身銭をきって求めたものへの愛着というのはどのようなものにも生じるものだ。お金を出すだけで生涯の宝になるかもしれないものが買えるなんて、すばらしいことだと思い、時々は私も詩の本を買う。しかし自分の詩集となるとできるだけあげたいと思うのである。

記念会では、最近マイミクになった方から「私です」と自己紹介された。松下さんの教室の生徒さんだったのか。これからもよろしく。松下さんを中心とした初心者教室は横浜と池袋にあり、そこからかなり来られていたので全体としてとても若い集まりの印象があった。こういう雰囲気を見ていると、詩もまだ大丈夫かなと思う。久谷雉さんのお二人の詩の朗読はとてもよかった。声も素晴らしかったが詩の心がわかっている人の朗読だなと思った。二次会はなしで解散した。松下さん、佐々木さん、藤井さん、おめでとうございます。






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