ハンナ・アーレントの影響でカント『判断力批判』を読もうと書棚の奥から出してきたものの、河出書房の<世界の大思想>版なので1965年刊（53年前）と古い。もともとカントは悪文で有名なので、分かりにくいのは覚悟しないといけないが、それにしても文法的にもおかしく思われ、訳が悪いのではないかと疑い始めた。アマゾンで岩波文庫版のレビューをみると、これも訳は古そうだが「分かりやすい」と言う人がいたので、上下巻を注文した。それが来てもチンプンカンプンなら、これから拷問の日々となる可能性がある。しかし私はアーレントをとても信頼しているので、彼女が死の直前まで書こうとしていて果たせなかった幻の本が読めなくなった今、彼女にそうした刺激を与えた元ネタとしてのカントの第三批判書は多少の困難はあっても何とか読みたい、と思う。『純粋理性批判』を読んだのは50年前の学生時代で、同じ<世界の大思想>版だった。カントは50年間読まなくても生きていける。というか、たいていの人は読まないで一生を終わる。それがまともともいえる。
(A)活動的生活
アーレントによると人間の行動は『人間の条件』（著者が予定していたタイトルは『活動的生活』だった）で三つのものとして整理された。�＼弧燭隼丗垢魄飮�するために働くこと→労働 labor �⊆�然の循環にはなかったものを創り出すこと（道具などのほか、芸術作品も含む）→仕事 work ��人間同士の中で存立するための（大きくいうと政治 小さくいえば人間関係。これが記憶と歴史をつくる）→活動 actionである。まとめれば単純だが、これが意味するところを著者が語る細部は、極めて感動的で、繰り返しになるが私は真に偉大な書物であると感じている。
(B)精神の生活
しかし人間は外から見てわかる「行動」をしていない時にも、心の中で考えたりという内面的な行為を行なっている。その部分をまとめたのが『精神の生活』であり、アーレントはそれも三つの部分に分けた。�〇弭佑垢襪海鉢�意志すること�Ｈ獣任垢襪海函Ａ阿里佞燭弔脇鶸�の本として残され、それらはとても感動的だった。人はなぜ思考するのか、人はなぜ意志するのか（意志するということは「私はそれができる」と信じて行動に移ることだ）を考えることは人間とは何かを解き明かす鍵となるだろう。だがもうひとつの心の動きがある。それが「判断」だが、そのことは美に関わることを含むと、カントもアーレントも言っているらしい。人間はなぜ美を求めるのか。答えは得られないとしても求めずにはいられない。そういうわけで宅配便でカントが来るのを待っているのである。古い本が私を新しくしてくれると勝手に信じて。
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