ハンナ・アレントの『人間の条件』を読み終わった時、最終行となったカトーの引用は、私に大きな疑問を残した。同じ著者の『精神の生活』を読み始めると、扉のあとに1ページを使って同じフレーズが引用されていた。(となりにプラトンも居たが、それは略。)
何もしていないときほど活動しているときはないし、
ひとりでいるときほど孤独でないときはない。 カトー
今回は「序論」の中に出典が書かれていた。キケロの『国家論(De Republica)』からの孫引きらしい。(大)カトーはたびたびこれを口にしていたという。前著『人間の条件』は編集部が付けた書名で、アレント自身は『活動的生活』とするつもりで書いたという。「私の疑問を示す意味で、活動的生活についてのこの著作をキケロがカトーのものだとした奇妙な文章で終えたのである」。つまり、その疑問こそが次の本を書く動機となっているということであろうか。逆説的なレトリックで言われた文の意図はまたしてもわからなかったが、上下二巻を読めばわかる、ということのようだ。では、読みましょう。
最初は高い本なので図書館で借りて読み始めたのだが、赤青線が引けないことに耐えられず、アマゾンで注文してしまった。私に愛された本はすっかり汚れて商品価値をことごとく失う。序論をもう一度読み返して一章に入ったところだが、一行一行がすばらしい。上記の引用の謎についてはいつか書くかもしれないが書かないかもしれない。もう半分は分かっているような気もするのだが。
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