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2017年02月26日02:16

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中国王朝 よみがえる伝説〜西太后

去年シリーズでやっていた番組で、ぱたっと終わったと思ったら今年からまた復活した模様。今年は「悪女」シリーズらしい。1月に録画していたのをやっと見ました。

中国史上「悪女」と言われる人たちは、たいてい女ながら政治にかかわったり主体的に生きた人たちで、そうして表に出ること自体が「悪」とされた訳です。なので「悪女」と言われた人たちはその評判が見直しされていることが多いです。しかしそれでもこの人は清朝を傾けた張本人として言い訳の仕様がないだろう…と思われるのが西太后。

それがなんとビックリの新事実、逆転評価です。
まず、西太后の悪行を代表するのが、戊戌の政変で光緒帝から実権を奪い幽閉したこと。
しかしそれには深〜〜い訳があったのです。
光緒帝が成人してから、西太后は隠居して光緒帝が親政を行うように権力移譲を進めました。
そこへ光緒帝に近づいたのがイギリスです。清朝の改革を進めるために、イギリス人が政治の中枢に加わるよう光緒帝やその側近をそそのかしていきました。さらにそこへ、北京にいた伊藤博文が光緒帝と会見します。この会見の翌日、西太后は光緒帝を捕えて幽閉しました。
つまり、西太后は隠居しても光緒帝の周辺にスパイを送っていて、イギリスと日本が結託して、光緒帝を操って清朝を思いのままに動かそうとしていたという陰謀を見抜いたから、清朝を守るために行動を起こしたというのです。
おそらく、光緒帝を頤和園に閉じ込めて監禁状態にしたのも、イギリスと秘密裏に接触することを防ぐためだったのではないかと思います。

そのほか、西太后は当時の民衆から大変人気があったこと、西太后自身も民衆の前に姿を現すことがあったことなどもわかりました。昔の皇帝が民衆の前に姿を見せることは全くなかったことです。

たしかに、戊戌の政変の理由は納得できます。なぜ一度は隠居した西太后が突然光緒帝から実権を奪った上厳重に監禁したか。単なる権力欲では説明が難しいです。だからこそ西太后は権力に執着する悪女と言う風に解釈されてきたわけです。

さらに番組では浅田次郎が出演していました。「蒼穹の昴」を書きましたからね。「蒼穹の昴」でも西太后が従来の悪女解釈ではなくかなり新たな人物像が示されていました。浅田次郎自身が西太后は従来イメージされているような悪女ではないと思ったと語っています。ただ、「蒼穹の昴」では、光緒帝が戊戌の変法を実行した時、政権内部で分裂や内紛が絶えず、光緒帝がそれを収めることができないと見た西太后が政変を起こしたという風になっています。

それでも海軍の軍事費を流用して頤和園の大修復をしたとか、満漢全席のグルメ三昧とか、衣装道楽とか、悪評のネタはまだ残るのですが。

そして光緒帝の陵墓の調査もしていました。髪の毛を取り出して調べたというのです。さりげなく「髪の毛を採取」って言ってますけど、棺を開けたわけですね?遺体の状態とか、何の報告もないの?
しかし髪の毛には大量のヒ素が含まれていたというのです。つまり毒殺された可能性が高い。誰が光緒帝を殺したのか?ひょっとして西太后?
これはまた新たな疑問です。

光緒帝は若くして亡くなり、数日後西太后も死にます。今まで二人が相次いで死んだのは偶然のように思われてきましたが、西太后が光緒帝に自分の後を託すのに不安を感じて「道連れ」にしたのでしょうか。だからと言って3歳の溥儀を次期皇帝に指名したのはなぜなのか…。これは「蒼穹の昴」では、ずいぶんおもしろい解釈をしていますが、そちらはフィクションですからねえ。

さらに、番組では西太后がなぜ悪女とされたのか、という理由について、イギリス人の著書が挙げられていました。1910年にイギリスのバックハウスと言う人が「西太后治下の中国」という本を書きました。中身は西太后の悪行三昧を暴いたもので、世界中で読まれたそうです。このバックハウスと言う人はイギリスの秘密工作員だったことがずっとのちに明らかになりました。本の中身はほとんどフィクションでした。

私は単にこの本の影響だけではないと思いました。西太后の死後清朝は辛亥革命で滅びます。革命を起こした孫文は以前から何度も蜂起をしては失敗を繰り返していました。清朝が続けば中国は近代化できないという危機感は当時の中国にもあったはずです。そして革命が起こったら、倒された王朝が悪かったと言われるのは必然のことです。旧社会を打ちこわし、新しい社会を作るのが革命です。
なので、イギリス人の外側からのイメージ戦略だけでなく、中国国内でも清朝を倒し中華民国を建てた孫文は「中国革命の父」として讃えられていますので、その清朝を長きにわたって統治してきた西太后は旧社会の象徴として見られたということもあると思います。

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