昨年亡くなった旧東ドイツの指揮者クルト・ザンデルリンクがLP時代末期にEMIに録音したベートーヴェン交響曲全集のことを追悼の日記で取り上げたことがありましたが、わが国ではまだ4曲しか出ていなかったこの全集がついに完全な形で発売されました。タワーレコードの復刻企画によるものですが、このシリーズは以前からとても目の付け所がよく、つい先ごろもレーベルの活動停止で入手困難に陥っていたベルグルンドの最後のシベリウス全集や、永らく日本ではまともに評価されてこなかったオーマンディのブラームスやベートーヴェン全集を復刻してきた実績があるだけに、今回も拍手を贈りたいと思います。できればこの調子で、同じく日本では全曲が揃わないままレーベルが活動停止になってしまったウィン・モリスのベートーヴェン全集にも日の目を当てて欲しいところですが、さすがにこれは難しいかも。単に珍品10番のクーパーによる復元版を含むというだけでなく、あまりに落ち着き払った運びゆえにいささかブラームスっぽく聞こえ過ぎる感なしとしないザンデルリンクよりもベートーヴェンの音楽にはふさわしい演奏だと思うのですが、マーラーで聞かせる特異な味が薄いせいか、ファンにはあまり注目されてこなかった全集ですから。僕にいわせればマーラーとベートーヴェンを同じパターンで演奏しないところにこそ、指揮者としてのモリスの見識を感じるのですが。
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帯に書かれた「まさかの円谷プロ監修?」というコピーが全てを語っているといっても過言でないライトノベル「ウルトラマン妹(シスターズ)」。なんの因果か僕の誕生日に発売されたこの本はさすがに僕の住む田舎では入荷されませんでしたが、出張先の書店で見かけたので店頭で延々と迷ったあげく、怖いもの見たさに負けてとうとう買ってしまいました(汗)
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萌え系ラノベを読んだのは初めてでしたが、感想を一言でいえば「キャラクターだけでストーリー進行がない小説」ということに尽きるなあというのが正直なところ。この作品のみのことなのかジャンル共通のことなのかはわかりませんが、シスターズという複数形になっているのは人間とウルトラマン(ウーマン?)が合体するお約束ゆえのことなのでいいとして、頓狂かつ頼りないお嬢ちゃん2人の描写はたっぷり味わえる反面、出来事の進行に連れての変化などはほとんど見られないので、出来事自体の印象がどうしても薄く感じられます。特に小説のような文字から読者が想像で補わなければならないメディアにおいては、出来事が登場人物に及ぼす影響が描かれないと出来事自体に重みがなくなり、大したことが起きなかったという平板さを免れないものですが、この作品においては出来事の進行自体が端折られたりするので、よけいにそんな印象が強まります。冒頭で方向音痴のウルトラマン(ウーマン?)のせいではるか洋上の無人島に放り出され、エネルギー切れで半日丸々変身できないところで藪の中から猛獣の声という冒頭の章の場面の結びが
2人が日本に帰り着くまでには、まだまだ数え切れないほどの冒険が待ち受けているのだが−−−−。
けれども、それは別の物語、いつかまた違う機会に話すとしよう。
なのはまだいいとして、語り手役の兄が宇宙人に怪獣にされてしまったラスト近くの章の結びまでもが、
彼の体が人間に戻るまでには、さらなる苦難があり、そこには未知の大冒険が待っているのだが−−−−。
そのことを翔太はまだ知る由もないし、長くなるのでここでは割愛するとしよう。
なんてことになると、いやそこが読みたいんですけどとこちらもついつい突っ込みたくなります。まあこの2つの結び、明らかに対にされていることはわかるのですが。
こんな具合だったので、これだったら土曜日に公開される劇場映画「ウルトラマンサーガ」なんか少々不出来でも大傑作に見えるだろうなあと思ったとき、まさかこれは「サーガ」をてこ入れするため、あえて公開目前のこの時期に発売されたんぢゃなかろーかとの疑念が頭をよぎりましたが、もちろんこれは思い過ごしというものなのでせう……。
まあ子供と観にいく約束になっている映画を存分に楽しめるのなら、この本をためらいつつも買った値打ちはあったということになるわけですが、その回答はこの週末、24日に出ることとなります。いかなる結果とあいなりますか、括目して待ちたいと思います。
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