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2020年11月13日18:46

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ノートの上で思い出す社長の言葉

ギリシャ語で読む『メタピュシカ(形而上学)』のノートが11冊目を終了。今回は2か月と3日かかった。10冊目の時よりは遅いが、『冊』の入稿とか発送とかあった割にはまあまあであろう。

一日に読む量を増やせば全体量は増えるので、理屈は簡単だが、馴染みのない単語がたくさんあったり難しそうな文脈では、ここでやめとこう、と消極的な気分になる。しかし時々、もう少し読んでみようと自分を励まして進むと、案外面白くてすらすらとわかることがある。そういう時は妙にうれしいもので、今日はけっこう進んだぞと満足な気持ちになる。

それで思い出すのは、勤務時代、仕事が終わって社長と飲んだ時の話だ。定例の社内飲み会はいやいや付き合っているが、たまに一緒に取材した後に飲んだりすることがあった。そんなある暮れ方、居酒屋で社長が言った。「こうやって、今日やるべき仕事より少し余分にやっておくと、のちのちよいことがある。今日もよく働いた。さあ飲もう」。俗っぽい教訓と言われるかもしれないが、実感できる言葉だった。

30年以上、無能呼ばわりをされていた身でもあり、気の合わないボスであったことは言うまでもないが、それでも最後の数年は形だけにせよ「取締役編集担当」の肩書を与えられ、我社初の定年退職者となったのは、それなりの温情もあったからだ。彼は今年亡くなったが、いちばん心に残っているのは、「少し余分にやっておく」という言葉だ。居酒屋に座り込む時、満足げな顔をしていたのは、私に教訓を垂れるためにではなく自分に対して言っていたからだと思う。退職して12年を経たが、私はまったくお門違いの白いノートの上で、しょっちゅうそれを思い出す。のちのことはわからない。しかし、今日たった一行ぶん多く努力することはきっとよいことにちがいない。
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