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2015年10月25日21:18

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地下P53:追撃の果てに

>こ、小癪なあっ<
 怒りと区別できなくなった焦りや苛立ちに駆られるまま、炎をひたすら乱射するハイパーゼットンことバット星人。その視野は両端に位置する異形のウルトラマンと黄色いちっぽけなロボットの姿に完全に釘付けになっている。

 むろん頭ではわかっていた。人間ごときは無視するべきだと。そんなものに目を奪われてはならないと。なにしろ宇宙一の戦闘種族が懐に飛び込む隙を窺っているのだ。接近戦に持ち込まれて勝てる相手ではない! ウルトラマンの動きに集中せねばならぬ状況なのは明らかだった。
 だがアンナに出し抜かれた記憶と屈辱がそれを許さなかった。四次元怪獣の体内に閉じこめられた身でありながら、だからこそ置かれた状況を把握するや無謀と紙一重の奇策でまんまと全員を脱出させた油断ならぬ相手。こんな行動を取るからには何らかの策を弄しているはずなのに、どんなものか見当もつかない。今もビルの林を縫うようにして炎の間をかい潜りつつ、ウルトラマンに向き直ろうとすると視野の端に現れては集中を妨げる。ウルトラマンを牽制する駒のはずだった相手に逆に牽制される屈辱は、神を自認するバット星人にとって耐えられるものではなかった。もはや苛立ちのあまり焦りと怒りの区別さえつかなくなった堕ちた侵略者は、小癪な人間など瞬間移動で叩き潰せと叫んでやまぬ自尊心を、そんなことをすればそれを予測しているはずの難敵に懐へ飛び込まれるとわめく怯懦で抑えるのがやっとのあり様で、左右に展開し己に対峙する異形の戦神と人間につけ込まれまいと警戒しつつ我が身すれすれに撃ち込まれる光線技を防いでは炎を撃ち返すので手一杯だった。だから気づけなかったのだ。戦神が詰め寄るそぶりを見せるたびに間合いを取るのを繰り返すうち、その身が駅前に向けてじりじり押し込まれていることになど。

 そんなバット星人も突如として、自分の両横に道が開けたのに気づいた。だが左右どちらかへ動くべきかに意識が向いた瞬間、爆発音とともに足元の十字路が砕け両足が地下街を何層も一気に踏み抜いた。驚愕のあまり思わず落とし穴へと視線が下に向いたとたん、がら空きの脳天を燃える剛打が直撃した!


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「かかりやがったなこのクソ野郎!」
>てめえの翼も刈り込んでやらあっ<
 吠えるや目の前に傾いだ肩から生える一対の翼を手首に生やす光の刃で斬り飛ばすゼロ! この一瞬にかけたタイガの意識とのシンクロにより、いまや二人はビーストの意識を圧倒して完全に体を支配していた。そんな戦士たちの倍する動きはバット星人の追随しうる域ではなかった。
>こ、こんな原始的なトラップにっ<
 続く言葉を顔面に炸裂した一撃に粉砕され、たまらず上空へと瞬間移動する敵を追うもはや鬼神と化した一つの体の若者たち。必死で逃れようと大空を飛び回る敵に勝利を確信しつつも、翼を無くしたとは思えぬそのスピードに毒づきながら追い回す。
「ったくチョコマカ逃げ回んじゃねえゴキブリ野郎っ!」
>あのでかい翼は飾りかよ! 見かけ倒しの腰抜けめが<

 地上から届く声援また声援に、あの全員を俺たちは守れるとの思いにいやが上にも高揚するままついに敵に追い縋り、繰り出す連打で顔を守れば胴を、胴を守れば顔を抉り反撃もかなわぬ相手へ炸裂する渾身の追撃! 吹き飛ぶ先へと瞬間移動し光纏う拳でその胸めがけとどめを刺さんとしたそのとき、追いつめた悪党が絶叫する!
>や、やめろ! この星の全ての生命が私を支えているのだぞ。おまえはそれを砕く気か! その子らの目の前で親を殺すというのかあぁーーっ<
 瞬間ゼロの体が、地上の全員が、全てがその場で凍りつく!


地下版サーガプロジェクト54:破滅の翼 →
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← 地下版サーガプロジェクト52:呼びかけ
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