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日記一覧
- 本棚576『写真集 四季折々の山』山岳写真同人四季（東京新聞）
- 2023年08月27日19:55
災害対応の部署に移動して行動の制約がかかって、遠出や山登りができなくなったので、こうした季節毎の山々の写真を眺めると心の慰めになる。大きな公園も近くにはあるものの、やはり人工的に整えられたものと、自然の造形との差は大きい。人間や街の中に自
- 本棚575『清少納言がみていた宇宙と、わたしたちの宇宙は同じなのか？』池内了（青土社）
- 2023年08月26日18:29
宇宙論、科学技術社会論を専門とする著者が、文学と天文学の架け橋、文系知と理系知との融合を目指した野心的な書物。表題にもあるように、「星はすばる。」で有名な枕草子の星づくしから始まるが、動物や植物もふんだんに採り上げられており、まさに「新し
- 本棚574『古代マヤ』ナサニエル·ハリス（BL出版）
- 2023年08月22日21:39
先日、東京国立博物館の古代メキシコ展に行って、馴染みのあるアジアやヨーロッパとは異なる独自の世界観に惹きつけられた。 古代メキシコのうち、古代マヤ文明に焦点を当てた本書も、石造りのピラミッドや生贄の儀式など独特な文化に満ちている。特に、ト
- 本棚573『光であることば』若松英輔（小学館）
- 2023年08月15日23:55
愛する者を喪った悲しみが、時に変奏しつつ、著者のどの作品にも貫いている。そうした人生の暗がりを照らしたのが、ことばであった。一度深い闇に触れた者は、一層生の輝きを、生きることの本質をつかむことができるのかもしれない。 例えば、大学に勤めて
- 本棚572『１時間でわかるアイヌの歴史と文化』瀬川拓郎（宝島新書）
- 2023年08月13日18:38
生活、文化、美、信仰、自然といった多様な視点からアイヌの人びとの暮らしがコンパクトにまとめられている。松浦武四郎の『蝦夷漫画』などの絵図が豊富なのでイメージを持ちやすい。 面白かったのはアイヌの暦。一年を十二ヶ月で区切る点は同じだけれど、
- 本棚571『東京文学散歩』二松學舍大学文学部国文学科編（新典社）
- 2023年08月09日20:17
漱石、子規、鴎外、一葉、鏡花、藤村、実篤など、綺羅星のような数多の作家達が、東京という場所で作品を紡いだことが分かる。 『たけくらべ』の見返り柳のように、微かに往時の面影を残す場所も見られるものの、今は碑文などでしかその存在を知り得ない場
- 本棚570『軽いつづら』丸谷才一（新潮社）
- 2023年08月06日21:22
丸谷才一さんのエッセイは、肩肘張らずに読める軽みが最大の魅力だろう。紹介される雑学は、おそらく仕事や生活上役立つことはないけれど、読むと楽しい心持ちになってくる。 例えば、昭和のはじめに作られた「全国うまい物番付」など、見ているだけでお腹
- 本棚569『北アルプス礼賛』白籏史朗（新日本出版社）
- 2023年08月05日11:49
残照を浴びた雪の剣岳、槍ヶ岳を背に咲く可憐なコマクサ、霧が立ち込める夏の朝の燕岳の幻想、秋の涸沢のまばゆい錦繍ー。この写真集には北アルプスの多彩な表情が収められているが、中でも雪山の写真が多い印象を受けた。あらゆるものを峻拒するかのように
- 本棚568『災害列島・日本』3.11写真記録委員会（扶桑社）
- 2023年07月17日19:35
今月から職場が変わって、引越もしたので、ようやく読書をする余裕が出てきたところ。次は防災関係の部署なので、関連する本を新しい住まいの近くの図書館から借りてきた。 津波に飲み込まれた妻の亡骸を抱く夫の慟哭、避難所でぬいぐるみを横に置いて眠る
- 本棚567『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』辻佐保子（中央公論新社）
- 2023年06月23日21:09
新潮社から出版された辻邦生全集全二十巻の月報に、妻の辻佐保子さんが寄せた文章が集められている。常に辻邦生の傍らで創作する姿を見続けていた著者だからこそ表せる辻邦生の実像ーそれは常に明るいものではなく、フランスの留学時代の先が見通せない不安
- 本棚566『徳川家康と9つの危機』河合敦（PHP新書）
- 2023年06月11日21:59
「人の一生は重荷を負て遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思へば不足なし。心に望みおこらば、困窮したる時を思ひ出すべし。堪忍は無事長久の基。」 若き日の家康に忍従の心を植え付けた今川家での人質時代、多くの合戦に家康を駆り出しこ
- 本棚565『滅ぼされたユダヤの民の歌』イツハク・カツェネルソン（みすず書房）
- 2023年06月10日12:25
「お前たちは彼らをどこへ連れてゆくのか？私の民の気高い娘たちを、私の民の立派な息子たちを」 あんぐりと口を開けて待つ、ユダヤ人を強制収容所へと運ぶための貨車に対して、詩人はこう問いかける。 ワルシャワのユダヤ人ゲットーという絶望の淵におけ
- 本棚564『この人の閾』保坂和志（新潮社）
- 2023年06月05日21:52
十年ぶりに出逢った大学のサークルの女性の先輩との何気ない会話から成り立っている。芥川賞の受賞に当たっても、この淡々とした作風には賛否両論があったという（小説に面白さや愉しさを求める丸谷才一の評価が厳しかったのは、さもありなんという感じであ
- 本棚563『中国名言集 一日一言』井波律子（岩波現代文庫）
- 2023年05月31日12:48
詩文や史書、随筆、俗諺など、中国の悠久の歴史の中で紡がれた人間の叡智、幽幻な世界観を表す言葉たちが一日一言という形で収められている。杜甫や李白といった著名な詩人から、「人生 別離足（おお）し」の詩一篇のみで永遠に記憶されることになった于武
- 本棚562『人生は、だましだまし』田辺聖子（角川書店）
- 2023年05月23日09:07
「箴言」「アフォリズム」という堅い言葉よりも、日々を送る上での知恵といった柔らかな言葉が似合う本だった。 この間の連休に帰省した際、東大阪にある田辺聖子文学館に家族で行った時に感じた、一般的な文学館らしくない、おおらかで朗らかな雰囲気と同
- 本棚561『朝鮮詩集』金素雲訳編（岩波文庫）
- 2023年05月15日19:36
朝鮮の詩は何となく硬質なイメージがあったが、このアンソロジーを読むと、その詩情豊かな世界に惹かれた。 「いまはもう 乳色の雲も花の香もあとなく 鳩の脚染める銀糸の春の雨が 音もせで愁ひのやうに降りそぼるばかりー」「朝な朝な わたしはその人
- 本棚560『鉄道会社はどう生き残るか』佐藤信之（PHPビジネス新書）
- 2023年05月07日18:57
人口減少の進展や昨今のコロナ禍で鉄道会社の経営の厳しさが増す中、これまで都市部の路線の黒字によって補填していた地方部の路線の赤字を賄いきれなくなり、廃線やバス転換も含めた地方路線のあり方の検討が焦眉の急となっている。 本書は様々な地方鉄道
- 本棚559『高熱隧道』吉村昭（新潮文庫）
- 2023年05月04日16:21
何ともやるせない読後感に包まれ、黒部第三発電所建設のための隧道貫通という難工事達成の高揚感とはかけ離れている。三百名もの犠牲者を出し、166℃というダイナマイトも自然発火するおそれのある、死と隣り合わせの極限の仕事を強いる技士らに対する人夫
- 本棚558『NHK「100分de名著」ブックス 清少納言 枕草子』山口仲美（NHK出版）
- 2023年05月03日18:23
山口仲美さんの日本の古典についての本は、どれも物語の面白さがありありと感じられ、著者自身が研究を楽しむわくわくする思いも伝わってくる。 本書で取りあげる枕草子についても、その魅力を余すことなく教えてくれる。例えば、季節の美しさを、夜明け
- 本棚557『ほんとうのリーダーのみつけかた』梨木果歩（岩波書店）
- 2023年04月27日20:58
表題となっている「ほんとうのリーダー」。それを著者は、他人の目ではなく自分の中の目、客観的に自身を見つめ、批判し、考える力であるという。そうした自分の中のリーダーを持っている人として、戦時中、スパイだとされた中国人の捕虜を銃剣で一人一人突
- 本棚556『風の名前』高橋順子（小学館）
- 2023年04月19日12:05
日本には2145もの風の名前があるという。本書でも多くの風にまつわる言葉が紹介されているけど、氷山の一角だ。豊富な語彙は、日本人にとって「風」がすぐ側にある身近な存在であることの証だろう。 花信風、貝寄風（かいよせ）、白南風（しらはえ）、小夜
- 本棚555『青森 1950-1962 工藤正市写真集』工藤正市（みすず書房）
- 2023年04月17日22:03
工藤正市のことはこれまで存じ上げなかったけれど、生まれ育った青森の街の人びとを撮り続けたスナップ写真は、雪景色であってもどこか温もりが感じられる。入江泰吉の奈良や植田正治の鳥取のように、工藤にとっての「青森」は自身の中の一部の如く、終生切
- 本棚554『大人になるまでに読みたい15歳の詩�△い�る』和合亮一編（ゆまに書房）
- 2023年04月14日23:12
生、生きることをテーマにした詩のアンソロジー。 「木もれ陽がまぶしいということ」「ふっと或るメロディを思い出すということ」といった言葉が連なる後に、「人は愛するということ あなたの手のぬくみ いのちということ」と結ばれる谷川俊太郎の『生き
- 本棚553『英語対訳版サラダ記念日』俵万智 訳J·スタム（河出書房新社）
- 2023年04月10日12:42
短歌が主題の一つになったNHKの朝ドラ『舞いあがれ！』に俵万智さんが色々コメントを寄せられているのが面白く、久しぶりに本書を読み返したくなった。 英語の勉強も兼ねて対訳版を図書館で借りたが、短歌を翻訳することの難しさを感じた。例えば「菜種梅
- 本棚552『つながる沖縄近現代史』前田勇樹他（ボーダーインク）
- 2023年04月06日21:16
旅先の書店で郷土本のコーナーに立ち寄るのが好きだが、那覇のジュンク堂書店に行って驚いたのが、汗牛充棟という言葉が相応しい沖縄の歴史本の多さだ。長い年月をかけて様々な文化が混淆し、流転の歴史を経た地であるから、現在を成り立たせている過去への
- 本棚551『塩一トンの読書』須賀敦子（河出文庫）
- 2023年04月04日09:47
「人が生きるのは、答をみつけるためでもないし、だれかと、なにかと、競争するためなどでは、決してありえない。」 書評集であるにも関わらず、本書は本の中身の紹介にとどまらず、どこか箴言のような胸を打つ言葉が垣間見られる。様々な国の小説に対して
- 本棚550『沖縄の食文化』外間守善（ちくま学芸文庫）
- 2023年03月27日20:50
この一冊で、沖縄の魅惑的な食の世界の全体をつかむことができる。先日、母を案内した自由が丘の沖縄料理の名店「なんた浜」にまた足を運びたくなった。 随所に現れる、食にまつわる著者の想い出、沖縄の文化や風土は本書に奥行きを生み、単なる沖縄の料理
- 本棚549『沖縄』比嘉春潮他（岩波新書）
- 2023年03月16日00:05
西武門節や安里屋ユンタ、谷茶前節、唐船ドーイなど穏やかな旋律のものから軽快でリズミカルなものまで、沖縄民謡はどれも魅力的で、「歌と踊りの島」という呼び名にも頷ける。 他方で、本書では沖縄固有の文化や暮らしに対する蔑視や抑圧の歴史も語られる
- 本棚548『飛び立つ季節 旅のつばくろ』沢木耕太郎（新潮社）
- 2023年03月10日12:56
先日、沖縄を旅した時、那覇から慶良間諸島に行く船が高波で欠航になり、那覇市内の書店で開催された著者の講演会に行けることになった偶然に、旅の巡り会いの不思議さを感じた。 「旅」をテーマにしたこのエッセイ集からは、著者の旅に対する、ひいては生
- 本棚547『宮本常一 伝書鳩のように』宮本常一（平凡社）
- 2023年03月06日12:24
全国をくまなく歩き、放って置くと消え去ってしまう普通の人びとの暮らしや想い、生きた証を渉猟した宮本常一。その姿は表題の通り、「伝書鳩」のようである。 棚田の石垣として残るかつての石工が心を込めた仕事や、生活に欠かせない塩を求める人びとが海
