mixiユーザー(id:2716109)

2023年08月15日23:55

8 view

本棚573『光であることば』若松英輔(小学館)

 愛する者を喪った悲しみが、時に変奏しつつ、著者のどの作品にも貫いている。そうした人生の暗がりを照らしたのが、ことばであった。一度深い闇に触れた者は、一層生の輝きを、生きることの本質をつかむことができるのかもしれない。
 例えば、大学に勤めていた著者が、「人材」という言葉に違和を感じた話から、勉強と学びの違いへと思索が深まってゆく。

 「つまり、真実の学びとは、世にいう成功や栄達のためでなく、生の機微を見極め、人生の困難にあって己れを見失わずに生きるためである。さらにいえば、たとえ、矛盾が渦巻き、悲しみや苦しみが折り重なることすらある人生であっても、やはり生きるに値するものであることを、全身で感じようとするのが「学び」の本義だ、というのだろう。」

 人を代替可能な「人材」として捉えるのではなく、唯一無二の「人間」として捉える視点は、効率や競争を重視する現代社会とは対極にある。ことばよって自身を支えてきた著書のことばもまた、光となって次代の人びとの道を照らし、支えてゆくのだろう。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年08月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031