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2023年08月05日11:49

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本棚569『北アルプス礼賛』白籏史朗(新日本出版社)

 残照を浴びた雪の剣岳、槍ヶ岳を背に咲く可憐なコマクサ、霧が立ち込める夏の朝の燕岳の幻想、秋の涸沢のまばゆい錦繍ー。この写真集には北アルプスの多彩な表情が収められているが、中でも雪山の写真が多い印象を受けた。あらゆるものを峻拒するかのように聳える厳冬の山もあれば、同じ雪山でも、茜色に染まる穂高などはどこか穏やかで、包みこむ優しさのようなものさえ感じられる。

 生涯において、雪の高峰を実際に自分の目で見ることはないかもしれないけれど、日々暮らす同じ日本という地に、北アルプスという荘厳な場所があると思うだけで、生はより豊かなものになるような気がする。
 著者は駆け出しのカメラマンの頃、三畳の屋根裏部屋に住み、北アルプスに行く資金もなかったと思い出を振り返るが、そうした経験がバネとなって著者を北アルプスへと、その後のヒマラヤやロッキーなど世界の山々へと導く原動力となったのかもしれない。そして、写真を通じて清新な山の風を読者に与え続ける。
 
「だが私には、あの瞬時にして万物を凍らせるがごとき北アルプスの寒気や烈風が恋しくてならない。そこに在るとき、私はまさに生きる、という実感を肌に感ずるが故である。」
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