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2023年08月06日21:22

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本棚570『軽いつづら』丸谷才一(新潮社)

 丸谷才一さんのエッセイは、肩肘張らずに読める軽みが最大の魅力だろう。紹介される雑学は、おそらく仕事や生活上役立つことはないけれど、読むと楽しい心持ちになってくる。
 例えば、昭和のはじめに作られた「全国うまい物番付」など、見ているだけでお腹が空いてくるし、西方の大関に、地元の播州明石鯛刺身が挙げられていてつい嬉しくなる。
 他方で、軽みの中に真面目な話も時折垣間見られる。例えば、古今集を味噌吸物に、新古今をすまし吸物にたとえた幕末の小倉藩士の話に、作品の魅力を分析と比較によって語る文芸批評の原点を見出す慧眼。

 職場や住まいなど環境が変わっても、丸谷才一のエッセイを読むと、好奇心、探究心にあふれ、人生を楽しもうとする姿に元気づけられ、いつもと同じ気持ちでいられるのである。
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